「京都大学iPS細胞研究財団への寄付を考えている」
「でも怪しくない?本当に寄付して大丈夫?」
このように思う方のために、gooddo編集部が「公益財団法人京都大学iPS細胞研究財団(以下iPS財団) 」について調べました。ホームページでの活動内容チェックやSNSでの口コミリサーチ、寄付の専門家にインタビューした内容を紹介します。
結論から申し上げると、iPS財団は寄付先として信頼できる団体です。
その理由は、
・寄付者や支援者からの口コミ評判は良いものが多い
・様々なNPOを知る専門家からの評判も高い
・編集部で寄付の使い道や活動実績をリサーチしても十分な信頼が得られた
という点です。
iPS財団への寄付を考えている方は、前向きに検討して大丈夫です!
- 1 京都大学iPS細胞研究財団の良い口コミ評判まとめ
- 2 京都大学iPS細胞研究財団の悪い口コミ評判まとめ
- 3 専門家から見た京都大学iPS細胞研究財団の評価は?インタビューで徹底取材
- 4 京都大学iPS細胞研究財団は怪しい?信頼できるかを調べてみた
- 5 京都大学iPS細胞研究財団への寄付募金の方法
- 6 iPS細胞研究でノーベル賞を受賞!山中伸弥教授とは?
- 7 京都大学iPS細胞研究財団とは?
- 8 京都大学iPS細胞研究財団の活動内容
- 9 京都大学iPS細胞研究財団と京都大学iPS細胞研究所の違いは?
- 10 まとめ:京都大学iPS細胞研究財団への寄付が向いている人はこんな人!
- 11 参考:京都大学iPS細胞研究財団の基礎情報
京都大学iPS細胞研究財団の良い口コミ評判まとめ
京都大学iPS細胞研究財団の口コミ評判の良い面、悪い面の両方を紹介していきます。
まずは良い口コミについて紹介します。
私、京大・山中教授が理事長を務められているのiPS細胞研究財団に月々僅かですが寄付をしているんですけど、今日、活動報告なるものが送られてきました。なんかこういうの、自分のお金がどんな風に使われているのかがわかってすごく嬉しい(Twitterより)
実は昨夜、大好きな友達が指定難病だと聞いて一晩泣いてました。自分に出来る事はと探した結果、医学が進んで良い治療法が見つかるのが何よりと思い、山中教授のips細胞研究財団に毎月定額を寄付できるこちらにしました。どうか拡散ご協力お願いします。(Twitterより)
京都大学iPS細胞研究財団に寄付することに。 でも月額1000円だけで、 少ないですが
心不全の患者さんへのips細胞での治験が進行中と聞いて。
ふるさと納税の時と同じく控除申告出来ます。(Twitterより)
リサーチした結果
「iPS財団に寄付することで、難病の治療法の発見に貢献できるので寄付している」
「活動報告が送られてきて、寄付が何に使われているかわかって嬉しい」
といったように非常にポジティブで評判の良い投稿が目立ちました。
京都大学iPS細胞研究財団の悪い口コミ評判まとめ
一方、 京都大学iPS細胞研究財団の悪い口コミ評判を紹介します。
京都大学iPS細胞研究財団は広報の仕方が下手なんだと思う。研究結果も出し山中伸弥教授が率いてなおアピール力が弱い。再生医療が病苦に対する根治の希望である事を理解している人なら、あの簡単なサイトみて寄付しようとなるが、そもそも理解していない人には魅力的に見えにくいと思う。(Twitterより)
ips細胞研究財団が寄付で賄われてるのどう考えてもおかしい。こういうものこそ税金で支援すべきじゃないの?(Twitterより)
これらの投稿から、iPS財団へのネガティブなイメージというより、改善すると更に良くなるという前向きな意味での書き込みであると言えます。
ということで、「ホームページがわかりにくい」「iPS財団が寄付を集めなければいけないのはおかしい」といった内容について真偽を確かめるべく、gooddo編集部が専門家へインタビューしてきました。
専門家から見た京都大学iPS細胞研究財団の評価は?インタビューで徹底取材
京都大学iPS細胞研究財団に寄付するとなった場合に、口コミ評判を踏まえて編集部が気になる点は3つ。
- ・京都大学iPS細胞研究財団の強みや特徴は?
- ・広報をもっとうまくできないのか?
- ・寄付に頼らなければいけないのか?税金でなんとかならないのか?
これらの点について、NPOに詳しい寄付アドバイザーの河合さんにお話を伺いました。
非営利団体の運営支援コンサルタント。寄付の講座を開催しその魅力を伝えている。
数々の団体の経営に携わりながら、自らもNPOに寄付を続ける。
※詳細なプロフィールは文末に掲載
インタビュー結果まとめ: 京都大学iPS細胞研究財団は、社会から大きな期待を受け今まで誰も取り組まなかったことに挑戦している団体!
河合さんへのインタビュー結果を先に紹介します。
問)京都大学iPS細胞研究財団の強みや特徴は?
・大学等で十分に研究が進んだ技術やノウハウが、費用や設備等の課題で実用化されないといった課題を乗り超え、iPS細胞技術の実用化に向けた「橋渡し」の役割を担っている。今までになかったものを形にしている
・ファンドレイジングを担当する部署があり、専任担当者がいる
・寄付の実績や毎年の伸びから、社会からの期待が見て取れる
問)広報をもっとうまくできないのか?
毎年の予算には限りがあるもの。広報にかける予算や人員体制と、研究や実用化に向けた必要な予算や人員体制を考えた時、適正なバランスの中で最大限やられているのではないか。その結果が寄付額の増加にあらわれている。
問)寄付に頼らなければいけないのか?税金でなんとかならないのか?
以下のことをお伝えしたい。
・国からの支援(=国からの補助金など)を増やすには、納税者である私たち自身が声を上げて行政や政治家にその必要性を伝えていかなければいけない
・iPS細胞の実用化には莫大な予算が必要。日本の財源には限りがある。持続可能な活動や体制にしていくには、多くの人の継続的な支援としての寄付が必要。
・寄付金の活用にもメリットがある
詳しく紹介していきます。
インタビュー詳細1:京都大学iPS細胞研究財団の強みや特徴は?
私、河合が考える京都大学iPS細胞研究財団の強みや特徴は以下の3つです。
- ・大学等で十分に研究が進んだ技術やノウハウが、費用や設備等の課題で実用化されないといった課題を乗り超え、iPS細胞技術の実用化に向けた「橋渡し」の役割を担っている。今までになかったものを形にしている
- ・ファンドレイジングを担当する部署があり、専任担当者がいる
- <・寄付の実績や毎年の伸びから、社会からの期待が見て取れる
詳しく説明します。
今までになかったものを形にしている
iPS細胞技術の実用化に向けた「橋渡し」の役割を担い、言わば、「今までになかったものを形にする」というチャレンジをしている点がiPS財団の特徴の1つです。
みなさんもご存知のように世の中の、iPS細胞への期待は非常に高いです。
しかし、研究することと実用化することは、団体のHPでも「死の谷」という表現がされているとおり、私たちが考える以上に難しいです。そこを超えていかなければ多くの人がiPS細胞を「みんなが受けられる医療」にすることができません。
「多くの人にiPS細胞技術を良心的な価格で届ける」ことを目指し設立され、実用化に向け産業界との橋渡し役を担っているのが京都大学iPS細胞研究財団です。そのために必要な橋渡しの実務を担う技術者や職員を雇用し、持続可能な体制を築くためには、多くの方からの寄付が必要です。
ファンドレイジングを担当する部署があり、専任担当者がいる
ファンドレイジングを担当する部署があり、専任担当者を置いている点が強みとして挙げられます。
最近徐々に、専任のファンドレイザーを置くNPOや大学は増えていますが、多くの団体が兼任担当者で賄っている場合が多いです。担当部署と担当者を置くことで、寄付者とのコミュニケーションや寄付金集めの活動をより丁寧に行い、注力できる体制ができます。
それだけでなく、こうした存在や窓口が明確になることで信頼性の担保にもなっていると言えます。
寄付の実績や毎年の伸びから社会からの期待が見て取れる
京都大学iPS細胞研究財団は設立3年目ながら、多くの個人、また企業から寄付を得ています。それだけ社会から期待されている、信頼されている証だと思います。
令和2年度は6億7,000万円、令和3年度は約20億円の受け取り寄付(会費含む)の実績があります。
年々寄付金額も増え、期待と実績が伴っていることが分かります。
インタビュー詳細2:広報をもっとうまくできないのか?
私は、iPS財団は、様々な事業やプロジェクトを進めながら広報にかけるリソースに制約がある中でできる限りの広報活動をやっていると思います。
まず約20億の寄付を集めている実績です。この規模の寄付を集めている団体が他にどのくらいあるのか、と考えた時に、これはすごい金額だと思います。
シンポジウムなど大きな規模のイベント開催からオンラインイベントの開催、寄付キャンペーンの実施、メディアへの露出、団体及び他の方が発信するYouTubeなどやれることをやっています。
まだやれることは、もちろんあるかもしれません。しかし、広報にかける予算や人員体制と、研究や実用化に向けた必要な事業・プロジェクトとその予算や人員体制を考えた時、適正なバランスの中で最大限やっているのではないでしょうか。
足りない、と感じる方はiPS財団の広報にぜひ協力してみてはいかがでしょうか?iPS財団の活動を広めるのは何も財団自身だけである必要はありません。
山中先生は「自分はコミュニケーター」といって発信を続けています。もちろん財団にも活動を発信する広報担当者もいらっしゃいますが、その情報を受け取った私たち一人ひとりも同じようにコミュニケーターとなって、iPS財団の活動を広げることができたらどうでしょう。
より広く多様な人に情報を届けることができるでしょうし、そうした形での関わりも応援の一つになると思います。
SNSでの発信でも良いですし、寄付キャンペーンやクラウドファンディングの拡散でも良いと思います。一歩踏み込んで財団にご相談しながらご自身で寄付キャンペーンを立ち上げて、京都大学iPS細胞研究財団を寄付先としたチャリティランニングなどのチャリティ企画を個人で行うのもアイディアとしてあると思います。
インタビュー詳細3:寄付に頼らなければいけないのか?税金でなんとかならないのか?
確かに、iPS細胞による再生医療を多くの人にとって手に届くものにすることは、とても重要な取組みであり、実用化には多くの費用もかかるため、国をあげてサポートすべき、という考えも分からなくはありません。
しかし、このような声に対して私がお伝えしたいことは3つです。
- ・国からの支援(=国からの補助金など)を増やすには、納税者である私たち自身が声を上げて行政や政治家にその必要性を伝えていかなければいけない
- ・iP細胞の実用化には莫大な予算が必要。日本の財源には限りがある。持続可能な活動や体制にしていくには、多くの人の継続的な支援としての寄付が必要。
- ・寄付金の活用にもメリットがある
国からの支援を増やすには私たち自身が声を上げなければいけない
iPS財団は既に国の補助金を受け取って活用しています。
財務諸表を見ると収益は主に受取補助金(国からの国庫補助金・民間助成金など)、寄付金、事業収益です。
国庫補助金などの公的補助金を活用しつつ、iPS細胞提供事業や製造事業、細胞保管事業などによる事業収益などをあげ、さらに企業や個人からの寄付金も集めています。
国の予算(国からの支援)が多ければ、良いに越したことはないかもしれません。しかし、国がもっとそこに対して支援すべきだと思ったら私たち自身が声を上げていくべきでもあります。
公的補助金は税金が財源です。納税者である私たち国民が声をあげていかないと、国の予算配分は変わっていきません。
iP細胞の実用化には莫大な予算が必要。日本の財源には限りがある
iPS細胞という再生医療は、今までの医学や医療では治せない患者さんに新しい医療を届ける、1つの可能性でもあります。
アメリカでは、民間企業が巨額投資することで立ち上がったベンチャー企業が橋渡しの役目を担うため、実用化までの流れが比較的スムーズであった事例がいくつもあるそうです。
一方、日本ではこのような道筋が整っておらず、iPS財団がその「橋渡しの役割」を担い、製造に多大なコストと技術が必要となるiPS細胞を、非営利機関には無償で、営利機関には低価格で提供しています。
特徴のところで述べたように「今までになかったものを形にしている」のがiPS財団です。アメリカでは民間企業の巨額投資で立ち上がったベンチャー企業が担っている橋渡しの役割を、日本で初めて形にしたのが京都大学iPS細胞研究財団なのです。莫大な予算が必要なのは当然のことです。
また、国のお金は湯水のようにあるわけではありません。ましてや財政的に厳しい状況にある日本においてはなおさらです、
さらに、iPS細胞の応用研究以外にも、子どもの貧困への取組みを国の予算でカバーすべきとおっしゃる方もいるでしょうし、他の社会的課題について、国が支援すべきとおっしゃる方もいらっしゃるでしょう。
限られた予算を必要なところに分配していくと、当たり前ですが一団体やそのテーマ/課題に充てられる金額には上限があります。必要だからといって国の予算(支援)で全部は賄えないのです。
寄付金の活用にもメリットがある
寄付を活用することは決してネガティブなことや悪いことではありません。
先にも述べましたが、国の予算だと上限があります。全体が決まっている中で、さらに他の課題への配分もあります。
しかし、寄付であればそうした全体予算からの配分の制約はなくなります。
寄付金を集め、活用していくことを、ポジティブな面に注目して考えてみてはいかがでしょうか?
寄付はただ単に「お金を集めること」ということだけではありません。寄付を呼びかけ募ることにより「日本の医療において、iPS細胞という再生医療は、今までの医学や医療では治せない患者さんに新しい医療を届けること」であることを、今までiPS細胞について、漠然と聞いたことはあっても詳しくは知らなかった人に、知ってもらう機会になったり関心をもったりしてもらう、そして寄付というアクションを通して関わる・応援するという「市民参加の機会」を提供することでもあります。
iPS細胞の応用研究や実用化などに直接関われる人はごくごく一部の人たちです。
しかし、寄付をすることで、私たち一般市民もiPS細胞の実用化に向けた取り組みに関わることができるのです。自分の参加によって新しい医療を届けることを後押しできるわけです。
さらに、継続的に寄付をすることで、財団の活動の進捗をイベントや広報、寄付者向けの報告を通して聞き、一緒に進めている実感も持てます。
仮に、全てを国の税金(支援)で賄い、寄付を募らなかったとした場合、市民が寄付を通して財団の活動を知り、関心を持って参加する機会は限られてしまうかもしれません。もちろん、納税により間接的に関わってはいますが、もっと積極的に関心を持つ機会があり、一緒に後押ししていきたい、進めていきたいと思ったら寄付を通して進めていくことができます。
iPS細胞の実用化やそれに向けた橋渡しの取組みは長い道のりであり、大きなチャレンジではありますが、だからこそ私たち一人ひとりも、誰かに任せるのではなく一緒にチャレンジができる進め方を「寄付を呼びかけ募る」「その呼びかけに協力し寄付をする」ということで実現ができ、財団の寄付募集はそうした魅力があると感じます。
京都大学iPS細胞研究財団は怪しい?信頼できるかを調べてみた
gooddo編集部で独自に団体公式ホームページをリサーチし、京都大学iPS細胞研究財団の信頼性を確かめました。
以下の3点を調査しました。
- 寄付の目的と使途が整合しているか?
- 情報開示を行っているか?
- どのような法人格を取得しているか?
1.寄付の目的と使途が整合しているか
iPS財団は、寄付を以下のように使うとしています。
- ・iPS細胞の製造・提供
- ・次世代iPS細胞の開発および生産技術の開発
- ・iPS細胞技術の情報共有・普及等
活動レポートやホームページには、iPS細胞の研究結果やそのための施設改修に使ったとの報告があります。
このように、集まった寄付は適正に使われていることがわかります。
参考:活動報告 | 公益財団法人 京都大学iPS細胞研究財団
2.情報開示を行っているか
iPS財団は、2020年から1年に1度活動報告書を、半年に1度活動レポートを作成しホームページ上に公開しています。
活動レポートでは、行った研究内容やセミナー概要などが報告されており、活動の様子を伺うことができます。
また、Facebookやnoteが日々更新されており、寄付キャンペーンの実施状況などが発信されています。
参考:活動報告 | 公益財団法人 京都大学iPS細胞研究財団
3.どのような法人格を取得しているか?
京都大学iPS細胞研究財団は2020年4月に公益財団法人格を取得しています。
公益財団法人として、認定を受けるために必要な要件の主なものは以下の通りです。
- ・活動費全体の50%以上を公益目的事業が占めるか
- ・収支相償(公益目的事業にかかる収入が、実施に要する適正費用を超えないこと)が見込まれるか
上記含め様々な条件を満たす団体が、民間有識者からなる第三者委員会による公益性の審査を経て、行政庁(内閣府または都道府県)から公益認定を受けます。
また、公益財団法人には貸借対照表などの財務書類を一般に公開することが義務付けられています。
これらのことから、iPS財団は公益性や信頼性が認められた団体であることがわかります。
京都大学iPS細胞研究財団への寄付募金の方法
個人がiPS財団の活動を支援するには、以下の方法があります。
- ・継続寄付
- ・都度寄付
- ・遺贈寄付
詳しく解説します。
継続寄付
毎月決まった金額を寄付する継続寄付。
1,000円-50,000円の指定の金額から選び、クレジットカードで毎月自動的に支払います。
継続寄付をすることで、長期的にiPS財団の活動を支えることができ、よりiPS細胞技術を必要としている患者へ、必要な医療を届けることに繋がります。
都度寄付
寄付したいと思った自分のタイミングで、単発の寄付をすることができます。
支払い方法は以下の3種類があります。
- ・クレジットカード払い
- ・銀行振込
- ・専用の振込用紙
専用の振込用紙はインターネットを利用しない人向けで、電話で振込用紙を取り寄せることができます。
それぞれ1,000円以上の自分の好きな寄付金額で支援できます。
受領証が発行されなくて良いという方は、Yahoo!ネット募金を通じた100円からのクレジットカードでの寄付や、1円分からのTポイントでの寄付も可能です。
遺贈寄付
iPS財団では、寄付者の志に基づく、遺言書による寄付や相続財産からの寄付、保険・信託等による寄付を受け付けています。
詳しくは、団体ホームページをご覧ください。
寄付や税制上の優遇措置について、もっと詳しく知りたい方はこちらもご覧ください
>>寄付の方法や節税メリットなど、寄付・募金のよくある疑問に答えます
iPS細胞研究でノーベル賞を受賞!山中伸弥教授とは?
ここで、iPS財団の理事長を務める山中伸弥(やまなかしんや)教授がどのような方なのか、紹介していきたいと思います。
ノーベル生理学・医学賞を受賞
2007年、京都大学で研究を続けていた山中教授の研究グループは、ヒトの皮膚の細胞からiPS細胞を開発したことを論文として発表しました。
iPS細胞とはほぼ全ての細胞に変化することのできる細胞です。ヒトの細胞から、治療などに必要な組織をつくることができるようになり、病気やけがによって損傷を負った身体の組織を再生しようとする医療(再生医療)への応用が期待されています。
このことから、山中教授は2012年、ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
2010年に設立された京都大学iPS細胞研究所の所長を務めながら、2019年にはそこから分離してできたiPS財団の理事長にも就任し、2022年3月には研究所長を退任しました。
iPS細胞について、詳しくは以下の項目をご覧ください。
>>iPS細胞とは?
京都大学iPS細胞研究財団と京都大学iPS細胞研究所の違いについては以下で説明しています
>>京都大学iPS細胞研究財団と京都大学iPS細胞研究所の違いは?
コロナウイルスの情報発信も
山中教授は医学研究者個人として、新型コロナウイルスの情報発信も行っています。複数のグループが他の研究者の検証を経た論文などを参考にし、より正確な情報発信を心掛けています。
京都大学iPS細胞研究財団とは?
ここからは参考までに、iPS財団の活動内容を、改めて紹介します。
iPS財団は、一日も早く患者にiPS細胞による医療を届けるために設立されました。
細胞の製造や品質評価などの技術を産業界へ「橋渡し」しています。研究開発に関する様々な情報を集約・共有することにより、臨床応用の推進、品質・安全性の向上、コストダウンへの貢献を目指しています。
社会の先を歩き、医療の継続的な発展に寄与し続ける組織です。
iPS細胞とは
iPS細胞とはあらゆる細胞に変化することのできる細胞です。「人工多能性幹細胞」のことで、英語名 induced pluripotent stem cellの頭文字を取りiPS細胞と呼ばれています。
世界で初めてiPS細胞の作製に成功した山中伸弥教授によって名づけられました。
受精卵は、細胞分裂を繰り返す過程で、皮膚に変化する細胞 、骨に変化する細胞、神経に変化する細胞など、身体のさまざまな機能を持った細胞に「分化」していきます。この「分化」の流れは一方通行であり、長年 、簡単にさかのぼる方法はないと考えられてきました。
2007年に山中教授は、大人の女性の皮膚の細胞からiPS細胞を開発したことを発表しました。iPS細胞は、条件を整えれば シャーレのなかで iPS細胞のまま増殖します。また、特定の刺激を加えることで、神経細胞や心筋細胞など、さまざまな種類の細胞に変化することもできます。
つまり、ヒトの細胞から、治療などに必要な組織をつくれるようになったということです。
病気やけがによって損傷を負った身体の組織を再生しようとする医療(再生医療)への応用が期待されています。パーキンソン病や加齢黄斑変性*など、すでにいくつかの病気について 、臨床研究や治験が実施されています。
さらに、その人自身の細胞からiPS細胞を作り、そこから分化させた組織細胞を移植に使ったり、新薬が効くか確かめたりすることができれば、拒絶反応や副作用の少ない「オーダーメイド医療」への道筋も開ける可能性があります。
*加齢黄斑変性症:老化に伴い、眼の中の黄斑という組織がダメージを受け、視力の低下を引き起こす病気。失明を引き起こす病気。
京都大学iPS細胞研究財団の活動内容
iPS財団は、主に以下の2つの活動を行っています。
・臨床用iPS細胞事業
・受託サービスや人材育成などその他事業
それぞれ紹介していきます。
臨床用iPS細胞事業
京都大学iPS細胞研究財団は、臨床用のiPS細胞を現場の医療に活かしていくため、以下の3つのプロジェクトと細胞調製施設の運営を行っています。
iPS細胞ストックプロジェクト:HLAホモドナー
細胞調製施設(FiT)でiPS細胞を作製し、様々な品質評価を行った上で、再生医療に利用できるiPS細胞を選定、凍結保存。必要に応じて大学や企業などの研究機関へ提供しています。
日本国内で頻度の高いHLA型*の方から順にiPS細胞を作製しており、現在、日本人の約40%をカバーすることができると見込まれています。様々なiPS細胞の中から、HLA型や分化能、性別など、疾患や患者に合わせてよりよい細胞を選択することができます。すでに臨床研究や治験にて使用された実績のある細胞株もあります。
*HLA : ヒト白血球型抗原 (Human Leukocyte Antigen; HLA)。
ヒトの細胞で自己かそうではないかを見分ける目印のようなタンパク質の総称。白血球以外にも様々な細胞で存在しており 、組み合わせは数万通りにもなる。
iPS細胞ストックプロジェクト:ゲノム編集
HLAホモドナーと同様、iPS細胞を作製、選定、凍結保存しています。
HLAホモドナーの方から作製したiPS細胞ストックにゲノム編集を行い、拒絶反応のリスクを小さくしたiPS細胞を作製しています。また、非常に少ない株数で多くの日本人に対応可能になることが期待されています。
my iPSプロジェクト
自分の細胞から作ったiPS細胞は、移植の際、拒絶反応などのリスクを最小限にすることができます。一方で、患者さんごとのオーダーメイドとなるため、治療費が高額になるおそれがあります。
myiPSプロジェクトでは、必要とする患者に良心的な価格で自分由来のiPS細胞を提供できるよう、iPS細胞の効率的な製造を目指しています。
myiPSプロジェクト用の製造施設は、 大阪の中之島の「未来医療国際拠点」に置くことが 既に決まっています。2025年からの細胞提供を目指し、今後、研究開発がいっそう加速されることが見込まれています。
細胞調製施設(FiT)
細胞調製施設はiPS細胞の製造・保管を行う施設です。英語名「Facility for iPS Cell Therapy」の頭文字を取りFiTとも呼ばれています。
FiTは、再生医療等安全性確保法に基づく細胞培養加工施設として許可を取得済みです。
患者に移植する細胞は、医薬品と同等の安全性と品質を保証する必要があります。
FiTは国で定められた製造管理・品質管理の基準に準拠した適切な管理のもとで非常にクリーンな環境が維持されています。また、再生医療用iPS細胞の製造は、訓練された作業員の手によって行われています。
受託サービスや人材育成などその他事業
iPS財団は、iPS細胞のさらなる活用のため、下記のような様々なサポート事業を行っています。
- ・受託サービス
再生医療用のiPS細胞の製造や分化細胞の製造受託 - ・人材育成
iPS細胞の培養に関する実務者トレーニング - ・コンサルティング
データ解析・製造プロセス開発・薬事規制・臨床開発に関するコンサルティング - ・情報発信
産学官および国際交流等を通じた情報共有及び情報発信
京都大学iPS細胞研究財団と京都大学iPS細胞研究所の違いは?
ここでは、「京都大学iPS細胞研究財団」と「京都大学iPS細胞研究所」の違いについて解説します。
「京都大学iPS細胞研究財団」は、当記事で紹介している団体です。
2019年、iPS細胞の製造や品質評価などの技術を産業界へと「橋渡し」する機能を担うため、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)から一部機能を分離する形で設立されました。
設立者は京都大学で、設立当初は一般社団法人、翌年に公益財団法人へ移行しています。理事長は山中教授が務めています。
一方、「京都大学iPS細胞研究所」は大学組織の一部で、「国立大学法人京都大学」の「iPS細胞研究所」という部局です。
2010年にiPS細胞の研究と医療応用を目的に設置され、現在も研究者の育成や革新的な研究を進めています。
山中さんが所長を12年間務め、現在の所長は京都大学教授の髙橋淳さん。山中さんは現在名誉所長となっています。高橋さんは、iPS財団の理事でもあります。
以上のように、iPS財団はiPS細胞に関する技術を産業界へ展開する民間組織、京都大学iPS細胞研究所はiPS細胞の基礎研究をする大学組織の一部、と違った立場でそれぞれの役割を果たしています。
まとめ:京都大学iPS細胞研究財団への寄付が向いている人はこんな人!
ここでは、京都大学iPS細胞研究財団の評判や活動内容の紹介、専門家へのインタビューなどを行いました。記事で紹介した内容をまとめます。
- ・iPS財団は、必要としている患者にiPS細胞による医療を良心的な価格で届けようとしている
- ・iPS細胞技術の実用化に向けた「橋渡し」の役割を担い「今までになかったものを形にする」というチャレンジをしている
- ・iPS財団に寄付することで、iPS細胞による再生医療の実現に貢献できる
iPS財団は、日本の最先端の医学研究を実用化しようとしている団体です。病気で苦しむ人々を救いたい人、日本の医療の発展を応援したい人にはおすすめの寄付先です。
※文中に使用している画像・テキスト提供:公益財団法人京都大学iPS細胞研究財団
参考:京都大学iPS細胞研究財団の基礎情報
団体名 | 公益財団法人 京都大学iPS細胞研究財団(略称:CiRA_F) |
所在地 | 〒606-8397 京都市左京区聖護院川原町53番地 |
代表者 | 理事長 山中 伸弥 |
活動内容 | iPS細胞の製造、応用を中心とした研究開発及び臨床応用に対する総合的支援、教育訓練及び人材育成、情報発信 |
寄付先の選び方ガイド:河合将生(まさお)さん
NPO組織基盤強化コンサルタント office musubime代表/関西チャプター共同代表・准認定ファンドレイザー
大学卒業後、国際協力分野のNGOにボランティアスタッフとして参加。その後、国際交流・協力分野の中間支援組織へのインターンシップ、職員を経て、office musubime (オフィス ムスビメ)を2011年7月に設立。
寄り添って伴走する第三者として、身近な相談相手や多様な人・団体をつなぐ役割を通し、組織診断・組織基盤強化、ファンドレイジング支援など、各団体の支援に取り組む。
大阪マラソンチャリティ事務局担当や、国際協力や子ども/子育て支援、まちづくり分野、コミュニティ財団などの役員、大学の非常勤講師としてNPO論やボランティア論などの担当も。