近年、日本では一部の鳥獣の急激な生息数増加や生息地域の拡大により、農作物の被害や自然生態系の影響が深刻化しています。
このようななか、日本では「鳥獣保護管理法」という法律が制定されました。
この記事では、鳥獣保護管理法とはどのような法律なのか、鳥獣保護管理法の目的や対象となる鳥獣の種類、狩猟制度について紹介します。
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鳥獣保護管理法とは
鳥獣保護管理法とは、正式名称を「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」と言います。鳥獣保護管理法は、2014年に鳥獣保護法が改正されたことで生まれた法律です。
日本では、「鳥獣保護法」を基本とした鳥獣の保護に対する施策が取られてきましたが、「鳥獣保護管理法」へ改正されたことにより、人間と鳥獣との関わり方も「保護」から「管理」へと変化しています。
鳥獣保護管理法が定められた目的
鳥獣保護管理法の目的は、以下のように記されています。
この法律は、鳥獣の保護及び管理を図るための事業を実施するとともに、猟具の使用に係る危険を予防することにより、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化を図り、もって生物の多様性の確保(生態系の保護を含む。以下同じ。)、生活環境の保全及び農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、自然環境の恵沢を享受できる国民生活の確保及び地域社会の健全な発展に資することを目的とする。
(引用:e-Gov法令検索「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」)
しかし、近年ではシカやイノシシなどの一部の鳥獣の急増によって各地で深刻な被害が起きています。さらに高齢化による狩猟者の減少によって、鳥獣捕獲の担い手の確保が難しい状態です。
そこで、政府は深刻な鳥獣問題を打破することを目的として、鳥獣保護管理法に「鳥獣の保護」「狩猟の適正化」だけでなく「鳥獣の管理」を加えました。
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鳥獣保護管理法の対象となる鳥獣の種類
鳥獣保護管理法の対象となる鳥獣は、「鳥類または哺乳類に属する野生動物(ネズミ・モグラ類、海棲哺乳類含む)」です。
ただし、鳥獣保護管理法によって、以下のように定められています。
この法律の規定は、環境衛生の維持に重大な支障を及ぼすおそれのある鳥獣又は他の法令により捕獲等について適切な保護若しくは管理がなされている鳥獣であって環境省令で定めるものについては、適用しない。
(引用:e-Gov法令検索「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」)
そのため、以下の鳥獣は鳥獣保護管理法から除外されています。
鳥獣保護管理法対象外のネズミ類 | ドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミ |
---|---|
鳥獣保護管理法対象外の海棲哺乳類 | ニホンアシカ、アザラシ5種(アゴヒゲアザラシ・クラカケアザラシ・ゴマフアザラシ・ゼニガタアザラシ・ワモンアザラシ)、ジュゴンを除く海棲哺乳類 |
※2021年1月時点
(出典:環境省「鳥獣保護法の概要」)
(出典:環境省「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律の一部を改正する法律の施行について」)
鳥獣保護管理法における狩猟制度とは?
狩猟は、鳥獣保護管理法に定められている目的の適正な狩猟が認められており、それ以外の鳥獣を狩猟することは認められていません。
狩猟をするには免許・登録が必要
狩猟をするためには、狩猟免許の取得と狩猟者登録を行います。狩猟を行う際には、狩猟者登録を行った際に受け取る「狩猟者登録証」、「狩猟者記章」の着装が義務になります。さらに猟銃を利用する場合は、銃砲所持許可証も必要です。
狩猟免許は全国共通の資格で、有効期限が設けられています(免許を取得または更新した3年後の9月14日まで)。また、狩猟者登録は狩猟をする都道府県、かつ狩猟する年度ごとに申請することが必要です。
鳥獣保護管理法の狩猟対象となる鳥獣の種類
日本には約700種類にものぼる野生鳥獣が生息しています。そのなかでも狩猟対象となっている鳥獣は、以下の48種類です。
ただし、都道府県によって鳥獣の捕獲数が決められている場合もあるため、狩猟を行う際は事前に確認をする必要があります。
鳥類 (28種類・五十音順) |
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獣類 (20種類・五十音順) |
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鳥獣保護管理法の狩猟可能な期間や区域
狩猟には、狩猟可能な期間や区域が決められています。狩猟可能な期間は、農作業者の安全確保や狩猟による見通しのよさを考慮する必要があるため、毎年10月15日(北海道は毎年9月15日)から翌年の4月15日までの期間と決められています。
鳥類の繁殖や渡り鳥を考慮して、都道府県によって猟期の短縮・延長が行われています。
また、狩猟は指定猟法禁止区域、鳥獣保護区、休猟区、特定猟具使用禁止・制限区域、猟区または放鳥獣猟区では狩猟が禁止、狩猟方法の制限、人数制限なども行われています。
つまり、都道府県によって狩猟可能な区域や禁止・制限区域が決められているため、狩猟を行う都道府県の狩猟可能区域をあらかじめ確認しておくことが必要です。
鳥獣保護管理法で狩猟に使える道具や猟法
鳥獣保護管理法の定めにより、狩猟に使える道具は、狩猟免許によって異なります。狩猟免許を取ればすべての狩猟道具で狩猟ができるわけではないため注意が必要です。
また、狩猟免許は以下4種類に分けられており、自分の持つ狩猟免許で許可された道具で狩猟を行わなければいけません。
狩猟免許の種類により使用できる道具は、以下の通りです。
狩猟免許の種類 | 使用できる猟具 |
---|---|
網猟免許 | 網(むそう網、はり網、つき網、なげ網) |
わな猟免許 | わな(くくりわな、はこわな、はこおとし、囲いわな) ※囲いわなは農業者又は林業者が事業に対する被害を防止する目的で設置するものを除く。 |
第一種銃猟免許 | 装薬銃 |
第二種銃猟免許 | 空気銃 ※コルクを発射するものを除く。 |
(引用:環境省「狩猟制度の概要 」)
※2021年1月時点
(出典:環境省「狩猟制度の概要 」)
(出典:高知県ホームページ「狩猟制度の概略」)
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鳥獣保護管理法における捕獲許可制度とは?
鳥獣保護管理法では、野生鳥獣や鳥類の卵の捕獲や殺傷、採取などが原則として認められていません。しかし狩猟を行う場合や捕獲許可制度で認められた場合にのみ、鳥獣や卵の捕獲・採取を行うことができます。
鳥獣保護管理法で定められている捕獲許可制度とは、鳥獣や鳥類の卵が学術研究などで必要とされる場合や、鳥獣によって農作物などの被害を受けている場合など、環境大臣や都道府県知事の許可を得ることで野生鳥獣や鳥類の卵を捕獲・採取を行える制度です。
狩猟では48種の鳥獣に限り捕獲・採取を行うことができますが、捕獲許可制度では、狩猟鳥獣48種類に限らず、そのほかの鳥獣や卵までが捕獲・採取の対象となっています。
また、狩猟では狩猟可能期間が決められているのに対し、捕獲許可制度については、認められた捕獲・採取の許可期間内に限り、年中いつでも捕獲・採取を行うことが可能です。
※2021年1月時点
(出典:環境省「捕獲許可制度の概要」)
鳥獣保護管理法での国や自治体、私たちの役割
鳥獣保護管理法における国や自治体、私たちの役割とは一体、どのようなものなのでしょうか。
それぞれの役割を知り、鳥獣保護管理法についてより理解しましょう。
鳥獣保護管理法における国の役割
鳥獣保護管理法における国の役割は、国際的かつ全国的な鳥獣保護の観点から、法律や基本指針に則って、国全体の鳥獣保護と管理の行政指針を示すことです。
さらに、関係省庁間の連携強化を図ることで、鳥獣保護管理の行政指針に基づく取り組みを促しています。
鳥獣保護管理法における地方自治体の役割
地方自治体の鳥獣保護管理法における役割は、地域の鳥獣保護や管理を行う観点から、国と連携を取り、地域の実情を踏まえて施策を実施することです。
地方自治体では特に、鳥獣保護管理事業計画や特定計画を作成、市町村などが実施している鳥獣捕獲の調整など、捕獲に必要な施策を主体的に実施しています。
鳥獣保護管理法における民間団体や専門家、市民の役割
専門家は、地方自治体などに対して、科学的な根拠に基づいた適切な助言、指導を行う鳥獣保護管理における重要な役割を持っています。
民間団体や市民は地方自治体との連携を図ることによって、鳥獣と人との適切な関係を築くことが期待されています。
例えば、鳥獣の興味を誘い引き付けないように、生ごみや作物の管理の徹底や鳥獣を追い払う対策などを図る必要があります。
(出典:環境省「鳥獣保護法の概要」)
鳥獣保護管理法を知り、生物多様性の確保や生活環境保全について考えよう
一部の野生鳥獣の急増によって、日本では2014年に鳥獣保護法から鳥獣保護管理法への改正が行われました。
鳥獣保護管理法は鳥獣の保護だけではなく、管理や狩猟の適正化によって、野生鳥獣と人間の適切な関係を築くことが期待されています。
そんな今、私たちも鳥獣保護管理法が定められた目的を理解し、生物多様性の確保や生活環境保全、鳥獣と人との関わりについて改めて考えていくことが大切です。