私たちのパートナーとして共生する動物を適正に飼養し保管していくための法律に、動物愛護管理法というものがあります。
動物愛護管理法は施行されてから改正が数回行われていますが、これは時代の変遷や深刻な事件の社会問題化が原因となっています。
この記事では、動物愛護管理法の改正により追加・変更された内容などを紹介します。
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改正された動物愛護管理法とは
動物愛護管理法は2000年に施行された法律です。
この動物愛護管理法は、以下のような基本原則があります。
すべての人が「動物は命あるもの」であることを認識し、みだりに動物を虐待することのないようにするのみでなく、人間と動物が共に生きていける社会を目指し、動物の習性をよく知ったうえで適正に取り扱うよう定めています。
(引用:環境省「動物愛護管理法の概要」)
前身には1973年に制定された「動物の保護及び管理に関する法律」があり、これは議員立法によって成立されました。
1999年に名称変更し、内容を動物取扱業の規制だけでなく、飼い主の責任の徹底や虐待、遺棄に関する罰則の適用動物の拡大、罰則の強化など大幅に改正し、翌年に施行されました。
この動物愛護管理法は2020年に至るまで、何度も改正されてきました。それは時代の移り変わりとともに、ペットとして飼育される動物の増加などが理由として挙げられます。
まずは改正内容によりどのような変化があったのか見ていきましょう。
※2020年12月時点
(出典:環境省「動物愛護管理法」)
(出典:環境省「動物愛護管理法の概要」)
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動物愛護管理法の改正により変わったところ
成立した当初は前身となる法律に、動物の飼養や管理を行う人全般に向けたルールを明確化したものの、時が経つに連れてそれだけでは足りないことが明らかになりました。
そこで2005年以降にその都度改正が行われ、2020年までに3回の内容の見直しが行われたのです。
2005年に行われた動物愛護管理法の改正
2005年に行われた法改正では、「基本指針や動物愛護管理推進計画の策定」「動物取扱業の適正化」「個体識別措置および特定動物の飼養など規制の全国一律化」「動物を科学上で利用する場合の配慮」などが盛り込まれています。
それまでになかった内容を追加する改正がされていますが、動物取扱業の適正化では、それまで届出制だったものを登録制にすることで、悪質業者の登録と更新、登録の取消しおよび業務停止命令措置を設けました。
またその際に事業所ごとに動物取扱責任者の選任の義務付け、都道府県知事などが行う研修会受講の義務付けもなされています。
さらにインターネットの普及により、販売などの施設を持たない業も動物取扱業に新たに追加しています。
動物取扱業も含め、動物を所有する人、特に特定動物の飼養に対する規制の全国一律化も行われました。
この改正では動物の所有者を明らかにする具体的な措置を環境大臣が定めることや、人の生命などに害を加える恐れがあるとして政令で定める特定動物についての個体識別措置の義務付け、危害などの防止徹底のための全国一律の規制の導入も実施しました。
(出典:環境省「平成17年に行われた法改正の内容」)
2012年に行われた動物愛護管理法の改正
2012年に2回目の改正が行われ、「動物取扱業者の適正化」が実施されています。
また「多頭飼育の適正化」「犬および猫の引き取り」「災害対応」なども加えられました。
動物取扱業者の適正化については、犬や猫の販売が大きく増加したことから幼齢個体の安全管理や、適正飼養のための獣医師との連係確保、販売困難となった犬猫などの終生飼養の確保、出生後56日を経過していない犬猫の販売のための引渡しや展示の禁止が追加されました。
また狂犬病予防法や種の保存法など違反を行った業者を登録拒否および登録取消し事由に追加するなど、動物取扱業者に係る規制強化も行われたのです。
多頭飼育においても動物取扱業者だけでなく、個人でも複数を飼うことで鳴き声による騒音や悪臭などが問題となっていたことから、その適正化を盛り込むこととなりました。
騒音や悪臭の発生に対しては勧告・命令の対象とし、生活環境上の支障の内容を明確化すること、多頭飼育による虐待の恐れがある事態などを追加し、飼育者に対する届出制度についての明記も行われています。
加えて2011年に発生した東日本大震災もあり、災害時の対応についての内容も改正時に追加されました。
動物愛護管理推進計画に定める事項に、災害時における動物の適正な飼育や保管に関する施策を追加すると同時に、動物愛護推進員の活動に、災害が起こったときの動物の避難や保護などに対する協力も加えられています。
ほかにも法目的の中に、虐待の防止だけでなく遺棄の防止や動物との共生、規制内容の中に終生飼育や適正な繁殖にかかる努力義務が所有者の責務としてあることが明記されました。
(出典:環境省「平成24年に行われた法改正の内容」)
2019年に行われた動物愛護管理法の改正
3回目となる改正が2019年に行われ、大きく追加・変更がされました。
まず動物取扱業者だけでなく、動物の所有者などすべての人が遵守する責務の明確化が行われています。
環境大臣や関係行政機関の長との協議により、動物の飼養や保管についての基準を定めたときは、所有者などすべてがその基準を遵守しなければならず、守られない場合は罰則が与えられます。
同時に動物取扱業者の中でも、一般的に販売する第一種動物取扱業の適正飼育などの促進がより細かく定められました。
これまでは明確化されなかった遵守基準を定め、対面による情報提供の徹底や帳簿の備え付けなどに係る義務の対象の拡大、動物取扱責任者の要件の適正化など8項目の追加や変更、明確化などが行われています。
その中でも特に大きな改正となったのが、第一種動物取扱業の登録拒否事由の追加です。
第一種動物取扱業者への拒否および取消要件が厳しくなっており、動物の取扱の適正化や厳正化が強化されることになりました。
具体的なものでは、それまで登録の取消処分があった日から2年を経過しない者は登録拒否となっていましたが、これが5年まで延長されています。
また種の保存法や鳥獣保護法、外来生物法違反のみが登録拒否対象となっていましたが、2019年の改正でその範囲を拡大し、禁固や罰金などの刑に処された者も5年未満であれば登録が拒否されます。
ほかにも、暴力団員でなくなった日から5年経過していない者や、不正または不誠実な行為をする恐れがあると認めるに足りる相当の理由がある者なども、登録拒否の対象として追加されました。
改正では動物の適正飼養のための規制の強化も行われています。これは動物取扱業者だけでなく、すべての動物所有者を対象としたものであり、特に飼育数が多い犬や猫を対象としています。
多頭飼育となる恐れがある、適正飼養が困難な場合の繁殖防止の義務化が行われていますが、これまで努力義務だったものが義務化へと変更されました。
加えて都道府県知事などによる指導や助言、報告徴収、立入検査の規定、特定動物に関する愛玩を目的とした飼養や保管の禁止、交雑により生じた動物を規制対象に追加することも盛り込まれています。
さらに改正内容のもう一つの注目点となったのが、マイクロチップ(※)の装着などについての明記です。
これまでも法改正の中でマイクロチップの装着が取り扱われてきましたが、3回目の改正により、犬猫などを販売する業者には取得した日から30日を経過する日までにマイクロチップを装着しなければいけない義務付けが行われました。
また犬猫の飼い主にも、努力義務としてマイクロチップを装着させることが求められています。
※マイクロチップ:15桁の数字が記録された円筒形の電子標識器具
(出典:環境省「動物愛護管理法」)
(出典:環境省「令和元年に行われた法改正の内容」)
(出典:環境省「改正動物愛護管理法の概要」,2019)
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動物愛護管理法が改正された背景
動物愛護管理法が制定され、改正が3回も行われてきたのには人が共生する動物の重要度が高まり、ペットとして飼う人が増える一方で、虐待事件や遺棄などが深刻化していったことが背景にあります。
2000年に制定されたこの動物愛護管理法は、「動物の保護及び管理に関する法律」の名称を変更し、すべての飼い主に対してのルールを加えることで成り立ちました。
しかし法整備が行われたあとも動物の虐待などの事件は増え続け、法律に違反したとして受理されたものだけでも2000年以降の件数は増加しています。
これは規制が行われたことで、これまで虐待事件として扱われなかったものが扱われるようになったとも見られますが、それまで見て見ぬ振りをされてきたものが浮き彫りになったとも言えます。
実際に2000年には14件だった通常受理数が、2002年には39件、2010年には58件、2017年には109件にも及んでいます。
すべてが起訴されたわけではありませんが、その疑いがあるものはこれだけの件数があることが判明しました。
2012年に罰則の強化は行われましたが、殺傷や虐待、遺棄など悪質な事件が絶えなかったことや、飼い主の管理能力を超えた多頭飼育による異臭や騒音が問題になっていたことから、2019年の3回目の改正に至りました。
またその管理の一つとしてマイクロチップの装着の義務化や努力義務の追加なども加えられ、より適正な飼養や保管ができるようにするために改正が行われています。
人と動物との共生は重要なものであり、適切な管理が行われていないことが社会問題として大きく取り上げられていることが伺えます。
(出典:環境省「動物の虐待事例等調査報告書」)
(出典:参議院「人と動物との共生社会実現に向けた対策の強化」)
改正された動物愛護管理法を理解し遵守しよう
今でも多くの家で動物が飼われています。あるいは近所に動物を飼う家がある人もいるでしょう。
特に昔からパートナーとして飼育されることが多い犬や、ブームによって多くの人に飼われるようになった猫は、殺傷や虐待、遺棄の対象ともなりやすい動物です。
言葉を話せない動物を飼うということは、その命に対して責任を負う覚悟が必要です。
そのような責任の所在、そしてルールを明記したのが動物愛護管理法であり、改正内容により明確化や厳正化が行われました。
内容も時代に合わせて変わっており、2019年の改正内容では一般的な飼い主にも関わりがあるものが追加・変更されているため、内容を理解して守れるように努めましょう。
これらを理解することが、より良い社会を作ることにつながります。