ケニア北部のトゥルカナ湖畔にある辺境で暮らすアンジェリーナさん(27歳)。
かつては魚を獲って売ることで生計を立てていましたが、相次ぐ気候変動が彼女の日常を奪っていきました。
生後8ヶ月の娘ルーシーさんの体調は、少しずつ悪化していきました。
栄養不良や感染症に直面するなか、お金がなくて薬を手に入れることもできない状況。
そんな絶望の淵に立たされた彼女に希望の光を届けたのはー
「以前は良かったんです」──恵みの湖から、脅威の湖へ
アンジェリーナさんは、夫と生後8ヶ月の娘ルーシーさん、そして叔母と共に暮らしています。
かつて一家の暮らしを支えていたのは、豊かなトゥルカナ湖での漁でした。
「以前は良かったんです。ボートがあって、働きに行くことができましたから」
そう語るアンジェリーナさん。夫と共に漁に出て魚を売り、その日の食料を買う。
最低限の収入の中から、両親を亡くした弟の学費まで工面していました。

しかし、その平穏な日常は、自然の猛威によって一変します。
「強い風が吹いて網が流れてしまいました。今はもう漁をする網がありません」
まず、大規模な暴風が、漁に不可欠な網をすべて奪い去りました。
追い打ちをかけるように、豪雨による洪水で湖の水位が上昇。魚の数も激減してしまったのです。
今は人から借りた網で漁を続けていますが、運が良ければ数匹獲れるものの、何も獲れない日も珍しくありません。
一家の稼ぎ頭であるアンジェリーナさんは、諦めずに漁以外の仕事を探します。
誰かのために働いて500シリング(約580円)の日当を得ると、そのお金で小麦粉2袋と油1リットルをなんとか手に入れて、ドーナツを作って売る。
そうやって、必死に日々の収入を得ていました。
そんな中、洪水は一家にさらなる脅威をもたらします。水位の上がった湖には、人を襲うワニが出没するようになったのです。
「人を食べるワニがいるんです。でも、私たちにはワニを追い払うような道具はありません」
湖は、かつての「恵みの場所」から、一歩間違えば命を奪う危険地帯に変わってしまったのです。
──もしあなたの家の周りに、いつ誰が襲われてもおかしくない生き物が現れたら?
アンジェリーナさんは苦渋の決断を迫られます。湖から離れれば漁ができず、収入はさらに減ってしまう。
それでも、家族の安全を第一に考え、住み慣れた湖畔を離れることを決意しました。
安全のために、家を手放すしかない。そんな極限の選択を迫られる人々がいるのです。
この決断により、彼女は弟の学費を払い続けることができなくなり、弟は学校を辞め、家に帰ってくるしかありませんでした。
勉強を続けたい気持ちがあったかもしれませんし、姉としても辛い決断だったはずです。
家族が生きるためには、誰かの夢をいったん手放さざるを得ない──そんな現実があります。
「空腹のまま眠りにつくこともあります」──飢えと病、そして母を苛む無力感
安全な場所へ移った一家を、今度は飢えが襲います。 食事は、1日に一度とるのがやっとです。
「食べ物が手に入るかどうかは、運次第です」
日中に食べるものがなければ、夜まで待ち、時にはその一度の食事さえ用意できず、家族は空腹のまま眠りにつきます。
朝、口にできるのは、わずかなお茶だけという日も少なくありません。
私たちが「今日は忙しくてご飯を抜いた」と言うような日が、アンジェリーナさん家族たちにとっては“日常”。
その“当たり前の空腹”が、子どもの健康や命を危うくしてしまうこともあるのです。
この過酷な状況が最も重くのしかかったのが、生後わずか8ヶ月の娘、ルーシーさんでした。
「食べるものが減ったことで、娘のルーシーは栄養不良になりました」
母親であるアンジェリーナさんの腕の中で、ルーシーさんは日に日に弱り、痩せていきました。

かつて、そんな彼らにとって唯一の希望だったのが、地域を巡回する移動クリニックでした。
しかし、その命綱は、援助資金の削減によって奪われようとしていたのです。
「クリニックは以前ほど頻繁には来なくなりました。今月は来ても、次の月はいつ来るかわからない。しまいには、クリニックの日にちや、どんな支援を受けていたかすら忘れてしまうほどでした」
医療へのアクセスが困難になる中、追い打ちをかけるように、ルーシーさんはマラリア(発熱、悪寒、頭痛などの症状が現れ、重症化すると死に至ることもある感染症)と肺炎を発症してしまいます。
母親として、アンジェリーナさんは絶望的な無力感に襲われました。
「子どもを大きな病院に連れて行くお金がなくて、とても辛かったです。もし大きな病院に連れて行くように言われたら、そのお金をどこから工面すればいいのだろう、と…」
頼れる人は誰もいない。
自分自身の体も、空腹で日に日に弱っていく。
腕の中で弱っていく我が子に何もしてあげられない…その無力感が、母親である彼女の心を深くえぐりました。
「待ち望んでいた支援──」一台の車が運んできた希望
そんな絶望の中、ある日、村に一台の車がやってきました。
セーブ・ザ・チルドレンの緊急保健ユニットです。
セーブ・ザ・チルドレンは、世界中の子どもたちの命を守り、学びを支え、暴力や災害から守るために活動しているNGO団体です。
緊急保健ユニットは、現地のチームや保健省と協力し、命を守るための保健・栄養サービスへのアクセスが絶たれた、最もリスクの高い地域の子どもや大人に向けて、移動診療拠点を設置しています。

この拠点では、栄養不良のスクリーニングと治療、産前・産後ケア、予防接種に加え、マラリアや下痢、肺炎、皮膚や目の感染症などの治療も行います。
さらに、緊急性の高い患者がいた場合は、治療のために保健施設や病院への紹介・搬送も行っているのです。
援助資金の削減により、これまで支援が届かなかったアンジェリーナさんの地域に、医療が届けられることになりました。
「以前から、ある組織が支援に来ると聞いて、私たちはずっと待っていたんです」
長い間、支援を待ち続けていた村人たちは、車を見て歓声を上げました。
「これこそ、私たちが待ち望んでいた支援だ!」
アンジェリーナさんは、ルーシーさんを抱きながら、クリニックへと向かいました。
栄養不良からの回復──医療支援が守った母子の命
クリニックで、ルーシーさんは急性栄養不良と診断され、すぐに栄養プログラムに登録されました。
そして、すぐに食べられる「栄養補助食」がアンジェリーナさんの手に渡されます。
「このピーナッツペーストはとても助かります。娘が日中にこれを食べると、他の食べ物と同じように満腹になります。彼女はそれが大好きなんです」

栄養治療食を口にする娘の姿を見て、アンジェリーナさんの心に少しずつ安堵が広がっていきます。
3回目の診察で、医療従事者は笑顔で告げました。
「ルーシーは回復に向かっていますよ」
経過観察中ではあるものの、その言葉を聞いた瞬間、張り詰めていたアンジェリーナさんの心の糸が、ようやく少しだけ緩みました。

アンジェリーナさんの困難は、決して特別なものではありません。
このトゥルカナ州では、5歳未満の子どもの3人に1人以上が栄養不良に直面しており、支援がなければ命を守ることが難しいのです。
子どもたちの“今”を守り、“未来”をつくるために
セーブ・ザ・チルドレンは、世界中の子どもたちにとって、生きる・育つ・守られる・参加する権利が実現されている社会を目指して活動するNGOです。
子どもたちの命を守り、学びを支え、暴力や災害から保護することをはじめ、包括的な支援を行っています。

紛争や自然災害、貧困によって、命の危険にさらされ、学びや安心できる環境を奪われた子どもたちがいます。
清潔な水や十分な食料、医療を受ける機会──。
私たちが当たり前だと思う日常が、彼らには届いていない現実があります。
そういった困難な環境に直面する子どもたちが
「明日も安心して生きられる」
「学校に通って夢を描いてもいいんだ」と思えるよう。
- 命を守るための緊急支援
紛争や自然災害を受けた地域で、子どもたちの命を守る支援を行っています。
現金や食料の配布、重度栄養不良への対応、母子保健サービスの提供など、命をつなぐための活動を実施しています。 -
学びを取り戻すための教育支援
教育の機会を奪われた子どもたちが、再び学べる環境を整えています。
学習スペースの設置や学用品の配布、教員への研修を通じて、子どもたちが未来への希望を取り戻せるよう支援しています。 -
子どもを守るための保護とレジリエンス向上
暴力や搾取、災害の脅威から子どもたちを守るため、安全な環境づくりを進めています。
子どもに優しい空間の設置や避難訓練の実施、地域保護委員会の設立を通じて、子どもたちの安心を支えます。
子どもたちの「今」を守る活動とともに、社会の仕組みづくりにも力を入れることで、子どもたちの「未来」守る活動も続けています。
仕組みの外側に取り残される子どもたちを守るために
セーブ・ザ・チルドレンは、設立から100年以上、日本を含む世界110ヶ国以上で活動してきました。
2024年にセーブ・ザ・チルドレンが直接支援を届けた子どもの数は、約4,120万人。
大人も含めると、約6,600万人にものぼります。
また近年は、国連や各国政府が主導し、子どもたちの命と未来を守る制度づくりも少しずつ進んでいます。
しかし、それでも、その“仕組みの外側”に取り残されてしまう子どもたちがいるのです。
30秒で終わる「セーブ・ザ・チルドレン」の活動に関するアンケートに答えて、無料でできる支援に参加しよう!
すべての子どもたちが、「安心して未来を描ける」社会を目指して──
今日も、世界のどこかで。
紛争や災害、貧困や差別によって、学校に通えなかったり、安心して暮らす場所を失っている子どもたちがいます。

けれど、適切な医療や十分な食べ物、そして大人たちの正しい知識と理解があれば、子どもたちは未来を諦めずに生きていくことができます。
公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、世界中の子どもたちにとって、生きる・育つ・守られる・参加する権利が実現されている社会を目指しています。
そして今、そんなセーブ・ザ・チルドレンの活動を“あなたの30秒”で応援することができます。
それは、セーブ・ザ・チルドレンの活動に関する3問のアンケートに答えるだけ。
今なら、30秒で終わる3問のアンケートに答えていただくだけで、10円の支援金をセーブ・ザ・チルドレンさんに届けることができます。
支援にかかる費用は、サポーター企業であるgooddo(※)が負担するため、あなたには一切費用はかからず個人情報なども必要ありません!
※gooddo株式会社は、株式会社セプテーニ・ホールディングス(東京証券取引所 スタンダード市場)のグループ会社
セーブ・ザ・チルドレンは、設立から100年以上にわたり、世界110ヶ国以上で子どもたちの支援活動を続けてきました。
小さな命が守られ、元気に成長する子どもたち。
学校に通えるようになり、夢を描けるようになった子どもたち。
自分たちの状況や社会を変えたいと立ち上がる子どもたち。
こうしたたくさんの子どもたちの変化は、サポーターの皆さまの温かい想いと支えがあったからこそ実現できたものです。
しかし、支援を必要としている子どもたちは、まだ世界中に数えきれないほど存在しています。
ひとりでも多くの子どもたちの命を守り、ひとりでも多くの子どもたちが未来を描けるようにするために──
ぜひ、あなたの力を貸していただけませんか?
ここまで読んで頂きありがとうございました。
「ひとりでも多くの子どもたちの命を守りたい」
「子どもたちの声を社会に届けられる環境を作りたい」
「紛争や自然災害に直面する子どもたちに、何か支援をしたい」
このように思われた方は、ぜひアンケートに回答して無料支援に参加してみませんか?
あなたのご支援が、紛争や貧困など、困難に直面する子どもたちの未来を変える力となります。
※本エピソードは、実際のエピソードをもとに再構成をしております