“普通”という言葉が、息苦しかった──“女の子として生きること”を強いられた17歳の苦しみ

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「スカートを着せられる度に泣いて嫌がってました。」
そう語るのは、高校2年生のユイさん(仮名・17歳)
 

ありのままの自分で生きているだけなのに、いじめられる学校生活。家族の無理解。

どこにも自分の居場所はないと、一度は命を断つことまで考えたユイさんを変えた出会いとは──。

 

笑われ、否定されても、消えなかった“自分らしさ”

いつも2つ上の兄にくっついて遊んでいたユイさんは、幼稚園の頃から兄の真似をして、自分のことを「僕」と呼んでいました。

気づけば遊ぶのは、いつも男の子たちばかり。ヒーローごっこではリーダー役を務め、走るのも速く、虫取りやサッカーも大好きでした。

「ユイは女の子なんだから、もっと女の子らしくしなさい」

両親からそう言われるたびに、胸の奥がざらつくような違和感が広がりました。

自分の心の中では、自分は“男の子”だと思っていたのに、どう言葉にしていいのかわからない。
 

スカートを無理やりはかされた小学校の入学式。

泣きじゃくるユイさんに、母はため息をついて言いました。

「いい加減にして。恥ずかしいわよ」

泣いているのは、恥ずかしいことなんだろうか。

違う服を着たいって言うのは、いけないことなんだろうか。

胸の奥が、ずっとヒリヒリしていました。
 

「これ、ユイに似合っててカワイイわよ」

女の子らしくさせたい母親は、小学校に入ったユイさんにスカートを着せようとしました。

「いやだ!こんなの着たくない!」

猛反発するユイさんに、母親は困った顔で言います。

「もっと女の子らしい格好しなさい」

その言葉を聞くたびに、ユイさんは心の中で何度もつぶやきました。

──僕は、女の子じゃない。
 

小学校高学年になると、ユイさんにとって地獄のような日々が始まりました。

「僕」と呼ぶことや、昼休みに男子に混ざって遊ぶことが、次第にからかいの的になっていったのです。

「男みたいでキモい」
「男好きなんじゃない?」

そんな言葉が飛び交うようになり、クラスの女子たちからいじめの対象にされました。

数人で集まっては、ユイさんの方を見ながらひそひそ話をしたり、机の中に「キモい」と書かれた紙を何枚も入れられたり。

最初のうちは気にしないようにしていました。

けれど、いじめは次第にエスカレートしていきます。
 

クラス中がユイさんを笑いものにし、男子のグループに近づこうとすると、「オナベ菌がうつる!」と騒がれることもありました。

「キモい」「近寄らないで」と、直接言われることも。

給食の時間には、隣の席をわざと空けられる。

先生は見て見ぬふり。
誰も、「やめなさい」と言ってくれませんでした。

教室のどこにも居場所がなくなったユイさんは、ただただ一日が過ぎるのを待つしかありませんでした。
 

親に相談したかったけれど──どうせ「女の子らしくしてないユイが悪い」と言われるに決まっている。

そう思うと、何も言えなくなってしまいました。

“普通”の制服が、自分を苦しめた

そんな毎日に耐えながらも、ユイさんはなんとか小学校を卒業しました。

中学校は学区ごとに振り分けられ、知り合いが半分ほどの新しい環境。

そのおかげで、自然といじめもなくなりました。

もう二度と、同じことは繰り返したくない」

そう思ったユイさんは、できるだけ目立たず、大人しく過ごそうと決めました。
 

けれど、中学進学のとき、ユイさんにとって何よりつらかったのが制服でした。

制服を買いに行った瞬間、目の前が真っ白になりました。

並ぶマネキンの中で、男子のブレザー姿はまぶしく見えたのに、女子のスカートだけが自分には遠い世界のように感じられたのです。
 

試着室で、鏡に映るスカート姿の自分を見た瞬間、“どうして自分だけがこんなにおかしいんだろう” 心の中の何かが、音を立てて崩れました。

「これを毎日、着なきゃいけないの?」

母は「みんなこうなんだから、仕方ないでしょ」とだけ言い、ユイさんの気持ちに耳を傾けようとはしませんでした。

テレビでは「ズボンも選べる学校が増えています」と報じられていましたが、ユイさんの学校は違ったのです。

入学式の日、春の冷たい風がスカートの裾を揺らすたびに、「自分はここにいてはいけない」と感じました。

入学当初は、吐き気がするような気持ちを押し殺しながらスカートを履いて登校していました。

けれど、しばらくして思い切って先生に「ズボンを履きたい」と伝えると、「わがままを言うな」と一言で切り捨てられました。
もう、なす術がありませんでした。
 

その翌日から、ユイさんは学校を休みがちになっていきます。

両親には「スカートが嫌だから」なんて本当の理由は言えません。

「体調が悪い」と嘘をついて、家でひとり過ごす日が増えていきました。

ひとりの時間が長くなるほど、自分の存在がわからなくなっていきました。

「どうして自分だけが、こんなにおかしいんだろう」

夜になると、布団の中で声を殺して泣く日が続きました。

“生きる意味”を見失いかけた15歳の夜

ある日、家族とテレビを見ていたときのこと。

画面にはゲイであることを公表している芸能人が映っていました。
 

そのとき、母が何気なく言いました。

「オカマなんて気持ち悪いね」
「ね、キモいよな」
兄も笑いながら続けます。

胸がぎゅっと締めつけられるような痛みが走りました。

「最近こういう人たち増えてるよな。俺たちの頃なんて見たことなかったのに」

父の言葉に、母と兄が頷くのを見て、ユイさんはその場から逃げ出したくなりました。
 

父親に「お前、まさかそっちじゃないよな」と探るように言われることもありました。

そのたびに、「そんなわけないよ」と笑ってごまかすしかありませんでした。

家の中でさえ、自分が自分でいられない。

その事実が、何よりもつらかったのです。
 

──絶対に、自分のことは知られてはいけない。

そう強く心に決めてから、ユイさんは自分を偽るようにして生きるようになりました。

けれど、心と身体のあいだにある深い溝は、どうしても埋まりません。

「このまま大人になって、女性として生き続けるなんて、絶対に無理だ」

未来を描けなくなり、次第に“生きる意味”が見えなくなっていきました。

そして、15歳のある日。
学校からの帰り道、ふと足が線路の前で止まりました。

「死んだら、次は男の子に生まれ変われるかな」

そうつぶやいた言葉は、風にかき消されていきました。
 

電車の音が近づいてきます。

胸の奥がざわめき、足が前に出そうになったその瞬間──

「君、何してるの? 危ないよ!」

後ろから腕をぐっと引かれました。

振り返ると、通りかかった見知らぬ女性が立っていました。

その瞬間、涙があふれ出しました。

「死にたかったのに……」という気持ちと、どこかほっとするような安堵が入り混じっていました。
 

助かってしまったからには、またあの苦しい日々に戻らなければならない──

そんな訳のわからない感情の渦に、ユイさんはただ立ち尽くすことしかできませんでした。

“自分を否定する必要はない”と教えてもらった日

なんとか“生きる側”に残ってしまったユイさんは、考えました。

──もう一度、生きてみよう。せめて、自分らしく。
 

地元で唯一、制服のない高校に入りたい。その思いだけを支えに、必死に勉強しました。

何度も心が折れそうになったけれど、「制服さえなければ、きっと大丈夫」と信じて。

そして迎えた合格発表の日。
掲示板に自分の番号を見つけた瞬間、胸の奥で何かが少しだけ軽くなりました。
 

もちろん、家族には“本当の自分”のことはまだ言えません。

だから、派手に男の子のような格好はできませんでした。

それでも──スカートをはかなくていい。好きな服を選べる。

たったそれだけで、ようやく呼吸がしやすくなった気がしたのです。
 

高校1年生のある日、学校でLGBTQについて学ぶ出張授業がありました。

来ていたのは、認定NPO法人ReBit。

LGBTQもありのままで未来を選べる社会をつくるために活動している団体です。
 

授業では、LGBTQの基礎知識や、多様性を尊重する大切さについて学びました。

講師が映し出したスライドには「LGBTQ」と書かれていて、性の多様性について話し始めます。

さらに、講師自身がトランスジェンダーであることを話してくれました。

「私は、性自認と生まれたときに割り当てられた性別が違うトランスジェンダーなんです。小さい頃から誰にも相談できなくて。小中学校のころは、毎晩布団の中で『自分っておかしいのかな…』って泣いてました」
 

講師はそこから少しずつ自分を受け入れられたきっかけを始めたと話してくれました。

高校で初めて友達にカミングアウトしたら『あなたはあなたじゃん』と言ってもらえて、その言葉をきいて自分のままでいいんだって思えたんです。」

講師は最後にこう話しました。

誰かとちがうことで、大人になれないのではと思う人がいるかもしれません。LGBTQの人に限らず、国籍や障がいや、さまざまな背景などによりそう思った経験がある人がいるかもしれません。」

「私自身も、そうでした。そのときに身近な大人に『あなたのままで大人になれる』といってほしかった。だからこそ今度は自分が一人の大人として『あなたのままで大人になれる』と伝えたいんです。」
 

授業の終わりには、担任の先生もこう話していました。

「先生も学びながら、LGBTQの生徒にとっても自分らしく過ごせる学校をつくっていきたいと思っています。何か気づいたことや困ったことがあったら、相談してください」
 

一緒に授業を受けていた仲の良い友達たちも「そういう人もいるよね。全然気にしないよね、うちらは」と肯定的な反応をしているのを見かけました。

家ではLGBTQに対する否定的な意見を耳にしていたので、その光景はまるで別世界のように感じられました。

自分を否定する人ばかりじゃないんだ」

「ありのままの自分でも受け入れてくれる人がいるんだ」

そのことを実感できた瞬間、ユイさんの心の中には、これまで感じたことのない大きな安心が広がりました。

「自分も、ありのままの自分で大人になれるのかな……」

そう思う気持ちは、まだ小さく揺れていましたが、少しだけ未来に希望の光が差し込んだのを、ユイさんは感じていました。
 

この授業で、ユイさんが最も印象に残ったのは、「LGBTQは人口の約10%、つまり10人に1人いる」という話でした。

「10人に1人……この学校でもきっと自分ひとりじゃないんだ」

そう考えると、孤独だった気持ちが少し和らぎました。

初めて“ありのまま”を受け入れてもらえた日

授業が終わってから、周りから見れば日常に大きな変化はなかったかもしれません。

でも、ユイさん自身にとっては、心の中の安心感が大きく変わっていました。
 

トランスジェンダーの大人と出会い、ロールモデルができたことで、「自分のままで大人になれるんだ」と思えるようになったこと。

困ったことがあったら、先生に相談できるんだという安心感が、心のお守りのようにユイさんの気持ちを軽くしてくれました。

そして、授業の後にLGBTQについて前向きな反応をしていた友達の一人に、思い切って打ち明けてみることにしました。

すごく緊張したけれど、放課後、二人きりになったタイミングで伝えました。

「実は、自分…トランスジェンダーなんだよね…」

その言葉に、友達は少し驚いたあと、穏やかに笑ってこう言いました。

「そうなんだ!別にいいじゃん。ユイはユイだしね

その瞬間、胸の奥の硬くなっていたものがふっと溶けるような感覚がありました。
 

そこから少しずつ、信頼できる友達にだけ本当のことを話していくようになりました。

「ありのままの自分を受け入れてもらえる」──それが、こんなにも生きやすいことなんだと初めて知りました。

家族にはまだ伝えられていないけれど、もう一人で抱え込むような苦しさはありません。

ユイさんは、やっと自分らしく笑える日々を取り戻しつつあります。

ReBitの「授業」が、未来を変える小さなきっかけに

ReBitは、「LGBTQもありのままで未来を選べる社会」をめざして活動するNPO法人です。

教育からキャリア、そして暮らしまで切れ目なく支えることで、LGBTQもありのままで未来を選べる社会をつくっています。

学校で行う出張授業では、LGBTQについての基礎知識や、多様性を尊重する大切さを伝えています。

「自分だけが変わっているんじゃないか」と孤独を感じていた子どもや若者たちが、「自分を否定しなくていいんだ」と思えるきっかけを届けています。

孤立を防ぎ、「生きていていい」と思えることを当たり前に

LGBTQの子どもや若者にとって大切なのは、「自分のままで安心できる人や場所」があることです。

また、「安心して相談できる場所がある」と答えた人は、自殺を考えたり自殺未遂をする割合が下がるという調査結果もあります。

孤立を防ぎ、支えてくれる人とつながれることが、命を守る力につながっているのです。

ReBitは、ありのままで安心できる社会を広げるために、以下の活動をしています。

  1. 学校への出張授業

    すべての学校をLGBTQにとっても安全な場所にするため、小中高大などで児童生徒、学生向けの出張授業をしています。これまで累計2,000回の授業を行ってきました。

  2. 先生がLGBTQの子どもたちを支える環境づくり

    教職員向けの研修を実施し、LGBTQへの理解を深めるとともに、授業で活用できる教材を開発し、無料で配布しています。これまでの教材の発行部数は、5.4万部になります。

  3. LGBTQの若者を支える就活支援

    学校を卒業した後も、LGBTQの若者たちは様々な困難に直面します。LGBTQもありのままで働けるように、2万人への就労支援や企業への研修を行っています。

こうした取り組みを通じて、孤立しがちな子ども、若者たちが「あなたはひとりじゃない」「自分らしく生きていい」と思って暮らせるよう、社会の仕組みを変え続けています。

30秒で終わる「ReBit」の活動に関するアンケートに答えて、無料でできる支援に参加しよう!

LGBTQの子どもたちが、「自分らしく生きていい」と思える社会を目指して──

学校や家庭、地域社会での無理解や偏見により、孤立を感じているLGBTQの子どもや若者が、今この瞬間も苦しんでいます。

でも、支えてくれる人との出会いや、安心して過ごせる学校、偏見のない職場、そして自分を受け入れてくれる社会があれば──

「自分らしく生きていい」と思える未来は、きっとつくることができる。
 

認定NPO法人ReBitは、孤立するLGBTQの子どもや若者に対して、教育からキャリア、そして暮らしまで切れ目なく支えることで、ありのままで未来を選べる社会をつくっています。

 

そして今、そんなReBitの活動を“あなたの30秒”で応援することができます。
それは、ReBitの活動に関する3問のアンケートに答えるだけ。

 

今なら、30秒で終わる3問のアンケートに答えていただくだけで、10円の支援金をReBitさんに届けることができます
 
支援にかかる費用は、サポーター企業であるgooddo(※)が負担するため、あなたには一切費用はかからず個人情報なども必要ありません!

※gooddo株式会社は、株式会社セプテーニ・ホールディングス(東京証券取引所 スタンダード市場)のグループ会社

 

▼「ReBit」代表の 藥師実芳 さんから頂いたメッセージ

私も女の子として生まれ、男性として生活するトランスジェンダーです。

周囲に相談できる大人が誰もいなくて、17歳で自殺未遂を経験しています。

当時の自分のように「誰かとちがう自分は生きていけない」と思う子ども、若者たちにあなたのままで大丈夫と、今度は自分が大人として伝えたい。
その思い、20歳でReBitを設立。

以降、16年にわたりLGBTQの啓発支援を行ってきました。

その想いは少しずつ実現していて、実際に

「ReBitと出会って自分のままで大人になれると思った」

「ReBitと出会ってから、自分らしく働けています」

といった声を頂いています。
 

しかし、ReBitの支援が届いているのは、まだ一部の人たちに限られています。

一人でも多くの、誰にも相談できずに悩んでいるLGBTQの子ども、若者たちに「ひとりじゃないよ」と伝えるために、ぜひあなたの力を貸していただけたら嬉しいです。

 
ここまで読んで頂きありがとうございました。
 
「LGBTQの人たちもありのままで生きられる社会をつくりたい」

「社会全体で多様性を尊重する未来をつくりたい」

「あなたはひとりじゃないよ、と伝えたい」
 
このように思われた方は、ぜひアンケートに回答して無料支援に参加してみませんか?
 
あなたのご支援が、LGBTQの子どもや若者たちの未来を変える力となります。
 

 

※情報提供:認定NPO法人ReBit
※画像は本文エピソードに出てくる本人とは関係ありません。
※本エピソードは、実際のエピソードをもとに再構成をしております