「“自分に味方はいない”そう思って生きてきました」
そう語るのは、児童養護施設で暮らすコウタさん(仮名・18歳)。
「自分に頼れる“大人”はいない。一人で生きていかなきゃ」
児童養護施設に入所した中学1年の冬から、そう思い続けてきた彼。
そんなコウタさんが、自分の未来を選択できるようになったのは「頼ってもいい”大人”」との出会いからでした。
唯一の味方だと思っていた、「母親からの否定」
物心がついたときから、家に父親の姿はありませんでした。
両親は彼が3歳のときに離婚し、それからは母親とのふたり暮らし。
最初の頃は、ふたりでテレビを見ながら笑う時間もあったといいます。
けれど、年齢を重ねるにつれて、家庭の空気は少しずつ変わっていきました。
コウタさんが小学生になると、母親はパートを転々とし始めました。
収入が不安定になるにつれて、精神的にも不安定になっていく母親。
些細なことで怒鳴られることが増え、食事を用意してもらえない日も珍しくなくなりました。
「仕事が続かないのは全部お前のせいだ」
「アンタがいなければ私はもっと自由だったのに」

そんな言葉を繰り返される夜が続きました。
それでも「自分にはお母さんしかいない」「お母さんに嫌われたくない」
そんな思いから、家では常に気を張って過ごし、怒りの矛先を避けるために、母親の顔色をうかがうことばかり考えていました。
「自分には頼れる”大人”がいないんだ」
中学に上がる頃、家で母親の姿を見ることはほとんどなくなっていました。
母親は「仕事だから」と言っていましたが、実際は男の人のもとに通っていたことを、コウタさんはうすうす感じていたといいます。
唯一、母親が置いていってくれていた数百円のお金を持って、近所のスーパーで菓子パンを買い、ひとりで食事を済ませる毎日。洗濯も掃除も身の回りのことは自分でこなすしかありませんでした。
そんな生活のなか、次第に学校でも孤立するようになってしまったコウタさん。
提出物が出せなかったり、居眠りをしてしまい先生から叱られることも増え、クラスメートとの関係もうまく築けなくなっていきました。
「誰も味方じゃない。自分には頼れる”大人”がいない」

ある日、給食を食べ終わったコウタさんが、食べ残しをこっそりポケットにしまっているのを、担任の先生が見かけました。「おなかが空いてるの?」と尋ねる先生に、コウタさんは首をふるだけ。
先生はどこか違和感を覚え、後日、スクールカウンセラーとの面談を勧めました。
面談では、コウタさんの表情や言葉の端々から、家庭の異変が少しずつ見えてきました。
何度かやりとりを重ねるうちに、彼の家庭環境が徐々に明らかになり、学校側は児童相談所に連絡。
しばらくして、児童養護施設への入所が決まりました。
「家を出るとき、寂しいって感情はなかった。むしろ、“ここから出られる”って思った」
「あたたかいご飯と居場所」──でも、何かが足りない日々
施設に入った当初、コウタさんは戸惑いながらも、“あたたかいご飯”を食べられる安心感に、少しずつ心がほどけていくのを感じていました。
誰かの顔色をうかがわずに、安心して眠れること。
それだけで、ほっとする自分がいたといいます。
けれど、居場所ができても、人を心から信じることはなかなかできませんでした。
職員さんはとても優しかったけれど、心のどこかで「また見捨てられるかもしれない」「期待すると傷つく」そう思うと、素直に甘えることができなかったそうです。
その気持ちがあふれたのは、中学2年の夏休み明け。
久しぶりの教室では、「ディズニー行った!」「海で日焼けした!」と、家族との思い出を語り合う声が飛び交っていました。
「自分には、そういう思い出がない」
クラスメートの明るい会話が耳に入るたび、コウタさんの胸に小さな波が立ちました。
みんなと同じ場にいるのに、自分だけ何かが欠けているような感覚。
笑っているふりをすることが、少しだけしんどくなりました。
その晩、勇気を出して「ディズニーに行ってみたい」と職員さんに伝えました。
すると職員さんは、やさしく笑って「行けたらいいね〜」「どんなアトラクションに乗りたい?」と話を盛り上げてくれた。
うれしかった。でも、どこか遠く感じました。
“連れて行ってくれる人”じゃない。
その瞬間、コウタさんは、はっきりとこう思ったといいます。
「やっぱり、僕には家族がいないんだな」

そんな気持ちを抱えたまま過ごす施設での暮らし。
輪の中にいるのに、いつもひとりぼっち。
「本当の居場所なんて、どこにもないんじゃないか」
そんな思いが、ふとした瞬間に胸をしめつけることもありました。
周囲の子どもたちが少しずつ打ち解け合っていくなかで、コウタさんはいつも一歩引いて、心に壁をつくってしまっていたそうです。
「本気で自分のことを考えてくれる大人なんて、いないと思ってた」
そんな日々を過ごしているうちに、高校生になったコウタさん。
周りは進学や就職を考え始める時期になりました。
高校卒業後は、施設を退所して1人で生きていかないといけないからすぐに働くしかない。
進学なんて、自分には関係のない世界。
そう思っていたコウタさんに、施設の職員さんが紹介してくれたのが、タクミさん(仮名)でした。
タクミさんは、認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパンが行っている、児童養護施設で暮らす子どもたちを支援するプロジェクト「ピースワラベ」の大学生ボランティアとして、施設を訪れていました。
「勉強や進路の相談に乗ってくれるボランティアの人が来るよ」と言われ、正直コウタさんは乗り気ではありませんでした。
「どうせ大人は信用できない」と思っていたから。
でも、初めて会ったときのタクミさんは、どこか不思議な人でした。

勉強や進路の話はそこそこに、「好きなゲームある?」「アイスは何味派?」と、ひたすら他愛のない話ばかり。
年が近いこともあり、趣味や漫画の話で盛り上がったり、一緒にゲームをしたり。
思いのほか楽しい時間を過ごすなかで、いつの間にかタクミさんと会う時間を楽しみにしているコウタさんがいました。
タクミさんとの面談は毎週あり、何度も会ううちに、コウタさんの方から話題を振ることも。
気づけば、「今こんなことに悩んでいて…」と、自分でも驚くようなことを口にしていた日もありました。
「大人は信用できない」と思っていたけれど、タクミさんは違う気がしました。
くだらない話から真面目な相談まで、話を遮らず、否定もせず、ただ丁寧に耳を傾けてくれる。
自分にこんなに真剣に向き合ってくれる大人がいるなんて――それが、コウタさんにとっては新鮮でした。
「未来は、“選べる”ものだった」
タクミさんとの面談を重ねていくうちに
「この人には、少し頼ってもいいかもしれない」
そんなふうに思えるようになった頃、タクミさんがふと提案してくれたのが、「進学」という道でした。
「コウタくんは、何かやりたいことはあるの?」
何も答えられなかった。それまで、将来のことなんて、考えたこともなかったから。
でも、タクミさんは何も言わずに頷いてくれました。
「難しいよね。おれも、なかなか見つけられなかった」
「でも、一つ覚えておいてほしいのは、コウタくんの未来には“進学”という道もあるってこと。もちろん、すぐに就職してもいい。大事なのは、“自分で納得できる道”を選ぶことだよ」
コウタさんが、初めて自分の将来について考えてみようと思えた出来事でした。

数週間後、思い切ってタクミさんに伝えてみました。
「ぼくも、タクミさんみたいに――施設で暮らしてる子の力になれる人になりたい」
コウタさんにとって、タクミさんの存在は、自分を“ひとりじゃない”と思わせてくれる大きな支えでした。
誰かと本音で話すことで、自分の中にずっとあった気持ちが少しずつ言葉になっていったのです。
その想いを聞いたタクミさんは嬉しそうに、
「それ、めちゃくちゃいいと思う」
「そのためには、大学や専門学校で勉強しなくちゃね!」
タクミさんが賛同してくれたことは、コウタさんにとって大きな支えになりました。
一方で、「でも、お金が…」
心の拠り所となる大人はできても、金銭的に頼れる大人がコウタさんにはいませんでした。
「おれが今やっているピースワラベのボランティア大学生は、奨学金がもらえるんだ」
「実際に活動をしながら、学べる良い環境だと思う」
「本気でやりたいことなら、学ぶことに遠慮なんていらない」
その言葉を聞いて、コウタさんには少し希望が見えました。
「自分も、誰かの“味方”になれる人になりたい」
そう思ったとき、「もっと学びたい」という気持ちが自然にわいてきたといいます。
「もし、やりたいことがあるなら、学びに行ってもいいんだ」
そう思えたことで、自分の未来の選択肢が、ひとつではないことに気づけたのです。
タクミさんに出会って、「“自分にも選べる未来があるんだ”って、初めて思えた」
そう語るコウタさんの表情は、どこか晴れやかでした。
未来の選択肢は、“ひとつじゃない”と伝えるために
児童養護施設で暮らす子どもたちは、生活に必要な「衣食住」は保障されています。
しかし、心の中には“孤独”や“我慢”が積もっていく日々があります。
本当に必要なのは、「信じてもいい大人」の存在です。
「誰かに頼ってもいいんだ」
「この人は、ずっとそばにいてくれる」
そう思える出会いが、子どもたちの未来を支える力になります。
ピースワラベは、児童養護施設で暮らす子どもたちに「心のつながり」や「社会とつながる経験」を届ける活動を行っています。
- 子どもを支えるコミュニティづくり
大学生ボランティアや、社会人メンターとの継続的なつながりをつくります。子どもたちが学び、成長していくうえで「この人を頼ってもいいんだ」「この人はいなくならないんだ」と安心できる心の土台になります。
-
施設職員との連携による個別支援
児童養護施設によって支援の質や体制にばらつきがある現状を踏まえて、職員と綿密に連携しながら、子どもたちの特性や課題に合わせた丁寧なサポートを行います。支援が“表面的な関わり”で終わらないよう、日々の生活の中に根づいた継続支援を重視しています。
-
体験活動の提供
ボランティア体験、国内外への短期留学など、子どもたちが社会との“つながり”を感じられる「体験機会」を提供しています。
「知らなかった世界を見ること」が、自信や将来への可能性が広がるきっかけになります。

ピースワラベの支援は、現在、東京・大阪だけでなく、青森や岡山、島根の離島など10都府県以上に広がっています。
それでも、継続的な支援を届けられているのは、まだごく一部の子どもたちに限られています。
大学生や社会人の協力も増えてきていますが、それ以上に深刻なのが“資金不足”です。
学習支援や信頼関係づくりができても、「社会との接点」や「未来を選ぶための体験機会」を届けきれていない現状があります。
自分の将来に希望を持てずにいる子どもたちは、今も全国にたくさんいます。
でも、たった一人との出会いが、未来を変えるきっかけになることもあるのです。
「頼ってもいいんだ」
「自分にも選べる未来があるんだ」
そんなふうに思える経験を、ピースワラベはこれからも届け続けていきます。
30秒で終わる「ピースワラベ」の活動に関するアンケートに答えて、無料でできる支援に参加しよう!

児童養護施設で暮らす子どもたちの中には、「自分には味方がいない」と感じながら日々を過ごす子もいます。
信頼できる大人との出会いは、そんな子どもたちが「自分の人生を選び取る力」を育む第一歩になります。
ピースワラベは、「心のつながり」と
「社会と出会う経験」を通して、子どもたちの未来を支える活動を行っています。
そして今、そんなピースワラベの活動を“あなたの30秒”で応援することができます。
それは、ピースワラベの活動に関する3問のアンケートに答えるだけ。
今なら、30秒で終わる3問のアンケートに答えていただくだけで、10円の支援金をピースワラベさんに届けることができます。
支援にかかる費用は、サポーター企業であるgooddo(※)が負担するため、あなたには一切費用はかからず個人情報なども必要ありません!
※gooddo株式会社は、株式会社セプテーニ・ホールディングス(東京証券取引所 スタンダード市場)のグループ会社

「助けて」と言えなかった子が、「話してもいいんだ」と思えるまでには、時間がかかります。
だからこそ、そばにいてくれる誰かの存在が、とても大切です。
ピースワラベは、児童養護施設で暮らす子どもたちに、心から信頼できる大人との出会いを届けています。
そして、子どもたちが社会とつながる体験を通して、「自分にもできることがある」と感じ、自らの未来を選ぶ力を育んでいます。
でも、まだ支援が届いていない子どもたちが全国にたくさんいます。
あなたの関心が、その子たちに届く支援の第一歩になります。
今、30秒だけ時間をいただけませんか?ピースワラベの活動に関する3問のアンケートに答えるだけで、子どもたちに“つながり”を届ける支援が始まります。
どうか、子どもたちの未来に希望の灯をともす活動に、あなたの力を貸していただけませんか?
ここまで読んで頂きありがとうございました。
「だれにも頼れないと感じている子どもたちの力になりたい!」
「あなたは一人じゃないよと伝えたい」
「子どもたちが未来を選択できる環境を作りたい」
このように思われた方は、ぜひアンケートに回答して無料支援に参加してみませんか?
あなたのご支援が、児童養護施設で暮らす子どもたちの未来を変える力となります。
※本エピソードは複数の事例をもとに再構成しております。
情報提供:認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン