環境省の調査によると日本では2022年度、年間2,434頭もの犬が殺処分を受けていることがわかりました。
私たちがこうして何気なく生活している間にも、毎日約7頭の犬が殺処分により命を落としていることになります。
安楽死とはほど遠い…『ドリームボックス』による殺処分の現実
身勝手に捨てられた犬の大多数は、全国の動物愛護センターなどに連れて行かれ、『ドリームボックス』と呼ばれる部屋で命を奪われています。とても楽しそうな雰囲気の名前ですが、実際は犬や猫を殺処分するためのガス室(殺処分機)のことです。
ボタンひとつで動く壁に押され、狭い通路を通って『ドリームボックス』に追いやられ、室内が徐々に炭酸ガスで満たされ呼吸ができなくなり、最終的に窒息死で命を落とします。
この『ドリームボックス』には、最期に苦しんだ犬や猫たちの爪あとが残っていると言います。テレビなどのメディアで報道される「安楽死」とはほど遠く、苦しみながら殺されているのが現実です。
日本の殺処分ゼロへのチャレンジ!
認定NPO法人によるピースワンコ・ジャパンの活動
このような犬や猫の殺処分を日本全国でゼロにするために活動している「ピースワンコ・ジャパン」というプロジェクトがあります。
ピースワンコ・ジャパンとは、広島県から認証を受けた「認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン」が、2012年から始めた「日本の殺処分問題」の解決などに取り組むプロジェクトの名前です。
“認定NPO”とは、都道府県などから活動内容が認められたNPOのことで、日本全国でたったの2%しかありません。また、認定NPOによる、ピースワンコ・ジャパンへ寄付をすると「寄付した人」は税制優遇(税額控除)を受けることができる」のです。
ピースワンコ・ジャパンの始まり
きっかけは殺処分寸前のある1匹の子犬との出会い
ピースワンコ・ジャパンのスタッフが、広島県の動物愛護センターを訪れたときの話です。その日は殺処分が行われる日でした。そんな時、スタッフはドリームボックス前に置かれたケージの中で、震えている1匹の子犬に出会いました。
生後3ヶ月くらいのその子犬は、その日、ガス室が満杯となり殺処分が延期されたところでした。まさに命を奪われる寸前だったのです。
スタッフはこの子犬を引き取ることを決め、ガス室から生還した彼に夢と希望を託す意味を込めて「夢之丞(ゆめのすけ)」と名付けました。この「夢之丞」は、のちに災害救助犬として活躍することになります。
殺処分寸前の「夢之丞」の状態
スタッフが「夢之丞」を抱き上げたときに、震えながらおしっこを漏らしてしまったと言います。犬はとても賢い動物です。きっと自分の死を覚悟したんでしょう。
『次は僕の番だ』と。
生まれて間もない子犬が、冷たいケージと殺風景な景色の中で抱いた「死を待つ恐怖」は想像もつきません。そこには安楽死という言葉では到底ごまかせない不安と絶望がありました。
おびえる犬の表情、ドリームボックスに残っている爪あと…ピースワンコ・ジャパンは「殺処分機をもう二度と稼働させてはいけない」という信念のもと始まったのです。
災害救助犬として活躍する「夢之丞」
最初は人に怯えて、懐くこともありませんでした。しかし、周りの人々の温かい想いに触れ、徐々に心を開くようになり、信頼関係を築くようになったと言います。
やがて、災害救助犬候補として訓練を受けるようになり、トレーナーと一緒に日々の厳しい救助訓練をこなし、「夢之丞」は強くたくましく育っていきました。