「増やしたくて増やしたわけじゃない」多頭飼育崩壊の現実

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昨日まで動いていた生まれたばかりの子猫が、翌朝には冷たくなっている。

この部屋では、それが日常茶飯事でした。

鼻を刺すようなツンとした臭いが漂う薄暗い部屋。
 

床には排泄物や食べ物の残骸、抜け落ちた毛がごちゃ混ぜになって散らばり、歩くたびに粘つくような感触がします。

どの猫も痩せ細り、毛並みは汚れ、元気がありません。

「……グゥ」
静まりかえった部屋に、空腹を訴えるお腹の音が響きます。

エサ皿のそばで待ち続けて、もう何時間経ったでしょうか。
ようやく扉が開き、飼い主がいくつかの皿を置いていきました。
 

匂いが鼻をかすめた瞬間、体が勝手に動きます。

でも同じ瞬間に、他の猫たちも一斉に群がってきました。

体格のいい猫に押しのけられ、皿の前にたどり着けないまま、あっという間に空になっていきます。

残ったのは、床に散らばったわずかな食べカスだけ。
それを一粒ずつ、拾って食べます。

これが、今日の食事でした。
 

この部屋にはたくさんの猫がいて、みんな同じようにお腹を空かせています。

「どうして、こんな状況になってしまったんだろう…?」

きっと、誰もがそう思ったはずです。

「命を助けたい」その思いから始まった

今から11年前。一人暮らしの高齢男性が、雨の日の夜に道端でふるえていた1匹の猫を拾いました。

妻に先立たれ、広い家に一人きり。

話し相手もいなく、日々の生活に張り合いを感じられなくなっていたその男性にとって、その猫は「生きる理由」になりました。

「お前だけが生きがいだ…」
 

男性は猫を可愛がり、大切に育てていました。

そして、家の中だけでは窮屈だからと、外への出入りをさせていたのです。

しかし問題は、不妊手術という命のルールを知らなかったことでした。
 

ある時、猫は家で出産をしました。
そして半年ほど経ったときに、その子どもたちもまた子どもを産んで──。
 

実は、猫の繁殖力は人間の想像を超えています。

猫は年に3回出産でき、一度に5〜7頭の子猫を産み、生まれた子猫は生後6ヶ月で妊娠できるようになります。

あっという間に猫は増え続け、いつしか男性一人では手に負えない数にまで膨れ上がってしまいました。

年金暮らしで収入は限られています。
 

増えていく猫たちに十分なエサも水も与えられなくなり、掃除も追いつかなくなりました。

病気になった猫がいても、動物病院へ連れていくお金がありません。

最終的に、その家の猫は50頭近くにまで増えていたのです。
 

これが、いわゆる「多頭飼育崩壊」です。

50頭の命を繋いだチケット:社会が差し伸べた救済とは

ある日、近所に住む主婦から、地域のボランティア団体へ一本の電話がかかってきました。

「お隣のおじいちゃんの家から、ひどい臭いがする。窓から猫が何匹も見えて……ずっと気になっていたんです」
 

行政とボランティア団体が一緒に訪問すると、そこには想像を超える光景が広がっていました。家の中には、数え切れないほどの猫たち。

あちこちに排泄物が散らばり、足の踏み場もない状態。

猫たちはやせ細り、目や鼻に分泌物が固まったままになっている子も少なくありませんでした。
 

飼い主の男性は特に何か言うこともなく、俯いたまま黙っていました。

「この子達は私の生きがいなんです…」

愛情が出発点だったことは明らかでした。
 

しかし、飼い主にどんな気持ちがあろうと、猫たちが置かれた現実は苦しいものでした。

行政は男性に対して、住環境の改善指導と、これ以上猫を増やさないための約束を求めました。

しかし、不妊手術を行わなければ、猫の数は今後も増え続けてしまいます。

ところが、この地域では、猫の不妊手術に対する補助制度がありません。
約50頭もの手術を行うには、莫大な費用がかかるのです。

増え続ける猫たちを前に、飼い主も行政、ボランティア団体も、どうすればいいのか分からず、途方に暮れていました。
 

そんな時、希望の光となったのが、公益財団法人どうぶつ基金が発行している「無料不妊手術チケット」。

行政は、全頭の不妊手術を行うためにチケットの申請をしました。

そして1ヶ月ほどかけて、動物病院の協力のもと無料不妊手術チケットによる不妊・去勢手術を全頭の猫に行うことができました。 

手術を終えた後、住環境の改善も進みました。

ボランティア団体が清掃を手伝い、猫用トイレを増やしました。

定期的な砂の交換や、毎日のエサやり支援の仕組みも整えられていきました。
 

しかし、年金暮らしの飼い主が50頭の世話をしていくのは難しいと判断。

飼い主との話し合いの末、5頭の猫を残して、残りの45頭はボランティア団体によって新たな家族のもとへと旅立ちました。

毎日空腹に耐えていたあの猫も、今は穏やかな日々を送っていることでしょう。

「猫の殺処分ゼロ」を目指すどうぶつ基金の取り組みとは

多頭飼育現場での劣悪な環境にいる猫たちの状況も許されないものですが、より深刻なのはその先の猫たちの行方です。
 

環境省が公表した2024年度の猫の殺処分数は4,866頭。
さらにそのうち半数以上の2,579頭が、赤ちゃんの猫です。

多頭飼育によって保護された猫たちは、動物愛護センターや保健所に持ち込まれ、殺処分となってしまうケースも決して少なくありません。
 

なぜなら、センターや保健所は、猫を無限に受け入れられる場所ではないからです。

限られたスペース(キャパシティ)しかないため、新しい飼い主が見つかるまでの期限が設けられてしまうという現実があります。
 

猫たちは、新しい家族との出会いを信じてわずかな時間を過ごしますが、全ての子に幸運が訪れるわけではありません。

残念ながら譲渡先が見つからなかった猫たちは、「殺処分」という、最も残酷な選択をされてしまうのです。

※どうぶつ基金が行う多頭飼育救済支援では、支援後の犬や猫を保健所やセンターが引き取る場合、どうぶつ基金と行政施設の間で、「譲渡先が見つからない場合も殺処分しない」という約束を必ずかわしています。

こうした悲劇の根源にある多頭飼育崩壊は、「飼い主の責任」だけに留まりません。

飼い主だけを責めても、猫たちの命は救うことはできず、不幸な猫が増え続けてしまいます。
 

多頭飼育崩壊の問題は、飼い主の精神状態や経済状況、所有権の問題などが複雑に絡み合うため、民間のみで解決に導くことは困難なのが現実です。

そのため行政が主体となった上で、民間が協働していく必要があります。

多頭飼育崩壊を解決するための第一歩、それは現場にいる猫の全頭不妊手術です。
 

しかし、多くの場合、飼い主にその手術費用を負担する経済的余裕はありません。

また、行政も飼い猫の不妊手術費用に税金を使うことはできません。

公益財団法人どうぶつ基金は、「殺処分される犬や猫をゼロにしたい。命を奪うことなく、人と動物が共に生きる道を模索したい」という思いのもと、活動している団体です。

その取り組みの一つが、多頭飼育崩壊から人と動物を同時に救うための、無料不妊手術チケットによる支援です。

繁殖を止めることで、飼い主が現状を見つめ直し、考え、行動するための時間をつくります。

そして、関係者のサポートを受けながら、生活の立て直しを目指してもらう──。

これが、どうぶつ基金の多頭飼育救済支援です。
 

実際の事例では、ボランティア団体による保護・譲渡のほか、動物愛護センター等の行政施設が引き取って譲渡先を探す場合もあります。

その際は、どうぶつ基金と行政施設の間で、「譲渡先が見つからない場合も殺処分しない」という約束を必ずかわしています。
 

譲渡には時間がかかるものですが、保健所や地域の保護猫活動を行う団体などと協力しながら猫の命を守り続けていきます。

さくらねこ無料不妊手術

どうぶつ基金では、1頭でも多くの猫に不妊手術を施すことが、殺処分ゼロを実現するもっとも有効な手段だと考えています。

そこで全国の獣医師や行政、ボランティアの方々と協働して、さくらねこ無料不妊手術事業を行っています。
 

多頭飼育救済時の不妊手術だけでなく、野良猫たちへも手術も行うことで、猫の殺処分ゼロを目指しています。

全国の協力病院で使用できる無料不妊手術チケットを発行し、チケットを持って猫を協力病院に持ち込むと無料で不妊手術を受けることができる仕組みです。

※多頭飼育者本人やご家族からの申請は受けておらず、必ず地域の行政への相談を通じて申請を行う必要があります。

多頭飼育崩壊の対応にあたる行政が、どうぶつ基金に申請するのがこのチケットです。

2024年度においては、61件実施し、1,123頭の猫に対し不妊・去勢手術を行いました。

すべての猫を救済し続けるため、手術チケットの存在は必要不可欠と言えるでしょう。

「さくら耳」は愛情の証


「さくら耳のさくらねこ」は、手間とお金をかけてでも猫たちに生きてほしいと思う人たちの心の現れ。

この思いが世の中で見えるようになることで、実際に殺処分される猫が減っています。
 

どうぶつ基金では、多頭飼育崩壊の救済だけでなく、地域に暮らす野良猫たちにも手術を行う「さくらねこTNR」活動を行っています。

「さくらねこTNR(※)」は、飼い主のいない猫に不妊手術を実施することで繁殖を防止し、「地域猫」や「さくらねこ」として一代限りの命を全うさせ、飼い主のいない猫に関する苦情や殺処分の減少に寄与する活動です。

T(Trap)…捕獲して
N(Neuter)…不妊手術をしてさくら耳カット
R(Return)…元の場所に戻す
 

2005年度には約23万頭もの猫が殺処分されていたことを考えると、このような活動が有効的であると言えるのではないでしょうか。

たった30秒!どうぶつ基金の活動に関するアンケートに答えて、猫の殺処分ゼロを応援しよう!


せっかくこの世に生まれてきたのに、「増えすぎて世話ができない」というだけでその命を奪われる…そんなことはあってはなりません。

まずは、今生きている命を大事にし、これ以上不幸な猫を増やさないために。

どうぶつ基金は、無料不妊手術チケットの発行や里親探しの支援なども行っています。
 

「殺処分ゼロ」を達成するためのどうぶつ基金の活動を、今すぐ応援する方法があります。

今なら、30秒で終わる3問のアンケートに答えていただくだけで、10円の支援金をどうぶつ基金さんに届けることができます。

支援にかかる費用は、サポーター企業であるgooddo(※)が負担するため、あなたには一切費用はかからず無料で支援ができます。また、個人情報なども必要ありません!

※gooddo株式会社は、株式会社セプテーニ・ホールディングス(東京証券取引所 スタンダード市場)のグループ会社

 

▼「どうぶつ基金」理事長 佐上邦久さんからいただいたメッセージ

※どうぶつ基金理事長は、完全無報酬で理事長職に従事しており、海外・国内の視察、出張手術などの旅費はすべて理事長が個人負担しています。

どうぶつ基金は、多くの方々の温かいご厚意と貴重な寄付に支えられ、これまでに42万頭を超える猫たちに無料不妊手術(TNR)を行ってきました。

そのおかげで、設立当初に約33万頭だった猫の殺処分数は、2022年には約1万頭にまで減少しました。

いつも、人の活動や身勝手な行動によるしわ寄せを受けるのは、何の罪もない動物たちです。そのような理不尽なことは、一日でも早く終わりにしなければいけません。

アンケートは私たちの活動に関する3問です。無料支援を通じて、ぜひ声なき彼らの命を救うためにご協力をお願いいたします。

 
ここまで関心を持って読んでいただき、ありがとうございました。

「殺処分問題を知って、なんとかしたいと思う」
「事情があり猫を飼うことやボランティアはできないけれど力になりたい」
「1頭でも多くの猫の命を守りたい」

そんな風に思われた方は、ぜひアンケートに答えて無料支援に参加してみませんか?

あなたのご支援が、1頭でも多くの猫たちの命を守る力となります。

 

公益財団法人どうぶつ基金様の収支報告はこちら:
https://www.doubutukikin.or.jp/doubutsu/disclo/
※情報提供:公益財団法人どうぶつ基金