たとえ死産でも、母親が殺人罪で投獄される国があることを知っていますか?

人口664万(2018年)の中米の国エルサルバドル共和国は、宗教は伝統的にローマ・カトリック教徒が約6割を占め、中絶が禁じられています。

過去には、強かんされたことにより妊娠してしまい、死産だったにも関わらず殺人罪に問われ、禁錮30年を言い渡された女性もいるのです。

彼女はアムネスティ・インターナショナルなど国内外の市民の声により減刑され釈放されましたが、そこに至るまでには過酷な現状がありました。

死産の悲しみだけでなく、投獄という不名誉な苦しみまで与えられた少女と、人権侵害のない世の中を願う「アムネスティ・インターナショナル」の国境を超えた市民運動について見ていきます。

子どもを失った悲しみに暮れるテオドラさんを襲ったさらなる苦しみとは?

2007年、身重だったテオドラ・デル・カルメン・バスケスさんは、仕事中に腹部への激しい痛みを感じ、大量の出血とともに気を失ってしまいました。
意識不明の状態で子どもが生まれましたが、結果は死産となってしまいました。

同僚が警察に電話をし、やって来た警察はその場でテオドラさんを逮捕

その後、彼女は加重殺人の罪で有罪となり、30年の刑を言い渡されました。

赤ちゃんを失った悲しみに暮れるテオドラさんは投獄という不名誉な苦しみまで二重にあじわうことになったのです。

流産や死産が「殺人」?!エルサルバドルの厳格な中絶禁止法とは?

厳格な中絶禁止法を持つエルサルバドルでは、妊娠中絶はどんな場合でも犯罪とされます。

たとえ強かんや近親相かんによる妊娠、母体に危険があった場合も決して許されず、流産や死産はまず中絶を疑われてしまうのです。
また、先天性の異常や妊娠合併症の危険性を理由とする中絶であっても、最高40年の禁錮刑に処される可能性があります。

エルサルバドルでは、女性にどんな事情があろうとも中絶は違法であり、殺人の罪に問われることもあるのです。

「アムネスティ・インターナショナル」の働きかけによりテオドラさんが30年の刑期を減刑され釈放!

アムネスティ・インターナショナルは、中絶禁止法は女性や性・生殖の権利を踏みにじるものだとして、中絶を犯罪とすることに反対の立場をとっています。

エルサルバドルに対しても、中絶禁止法を廃止するよう求め、妊娠中絶手術を受けたという理由や流産や死産を理由に投獄された人たちの釈放を訴えてきています。

アムネスティ・インターナショナルは、テオドラさんの件も2015年のライティングマラソンで取り上げ、釈放を求めるアクションを国境を越えて展開しました。
ライティングマラソンは、毎年12月10日の「世界人権デー」の前後に、世界中で一斉に手紙やハガキ、Eメールなどで状況の改善を政府に訴え、また人権侵害の被害者に一緒に闘っていることを伝えるメッセージを書く世界最大の人権イベントです。

こうした働きかけもあり、2018年2月15日に裁判所がテオドラさんの減刑を決定し、彼女は釈放されたのです。

エルサルバドルでは中絶禁止法によって少なくとも16人が裁判中か、収監されています
アムネスティ・インターナショナルは、これからも彼女たちの釈放と同時に、中絶禁止法の廃止をエルサルバドル政府に訴え続けていくと決心しています。

すべての人の権利や尊厳を守るために活動する世界最大の国際人権NGO「アムネスティ・インターナショナル」とは?

アムネスティ・インターナショナルは、60年の歴史をもつ世界最大の国際人権NGOです。

その最大の特徴は、ボランティアの方々が活動の主体となっていること。世界中で700万人以上の人が活動し、人権侵害のない世の中を願う市民の輪は年々大きく世界中に広がっています。

それだけでなく、人権侵害の被害者に寄り添うために不偏不党の立場をとり、政府からの助成を一切受けずに活動しています。

そして、一人でも多くの人権を守るために貧困・拷問・差別・迫害などさまざまなテーマを取り扱いますが、政治的主張、経済的な利害、宗教に一切とらわれることなく常に中立・独立した立場で調査や活動を行っています

そのような自発的で国境を超えた市民運動が認められ、1977年にはノーベル平和賞を受賞しました。

世界では、悲痛な「当たり前」がたくさん・・・。あなたの少しの協力で、救える命があります

世界には、私たちが知り得ない、悲痛な「当たり前」がたくさん存在します。

• テオドラさんのように死産で心と体に深い傷を負ってもなお、実刑を受けなくてはならない
• えん罪で逮捕されても、警察から殴る蹴る・電気ショック等の拷問を受けなくてはならない
• 手の指を1本切り落とされる等のDVを受けても、それが周囲から認められない

このような理不尽で悲しい現実は、その国では当たり前なのです。

アムネスティ・インターナショナルは、そんな当たり前に立ち向かい、少しでも早く・一人でも多くの人を救うために活動しています。
どうかあなたも、悲しい当たり前を変えるお手伝いをしていただけませんか?
一人ひとりの小さなチカラでも、救える命・居場所・気持ちがあります。

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そして少しでも共感いただけたなら、1日33円から出来るご支援についてお考えいただけると嬉しいです。

情報提供:公益社団法人 アムネスティ・インターナショナル日本