ボルネオ保全トラスト・ジャパンとは?
ボルネオ島の生物多様性保全と自然環境保護を通じて、「人と自然が共に生きることのできる環境を次世代に引き継ぐ」ための活動を続けています。

人間に安住の地を奪われたボルネオゾウの未来は?

提供: ボルネオ保全トラスト・ジャパン

マレーシアとインドネシアの間に位置するボルネオ島。

この島の北東部に、世界最小と言われ、絶滅危惧種に指定されているボルネオゾウが、わずかに2000頭ほど暮らしています。

ゾウの化石がこれまで見つかっていないこと、なぜかボルネオの北東部だけに偏って生息していることからその出生はナゾに包まれていて「もともと住んでいた」説と「外部から人が持ち込んだ」説があり、結論は出ていません。

あるのは「推定2000頭の絶滅危惧種」という事実だけです。

私たちはボルネオで州政府とともに動物の保護活動をしています。最近、そのボルネオゾウが捕獲・保護されるケースが増えてきました。

人里に出没して農園を荒らしたり、人にケガをさせたりする事件も起きています。大人のゾウだけでなく、本来なら母親と片時も離れずにいるはずも小ゾウもなぜか保護されます。

なぜだと思いますか?

はっきりした原因はわかりませんが、保護が増える理由の一つに、熱帯雨林の急激な開発による伐採があります。

ゾウたちの生息地である熱帯雨林がアブラヤシの大規模農園(プランテーション)の拡大によって狭められているのです。


アブラヤシ農園とパーム油

川辺のギリギリまでプランテーションが迫り、森が分断されている
提供: ボルネオ保全トラスト・ジャパン

今から約30年前、1980年代からボルネオ島北部では、農園開発が急激に進みました。ヤシ科のアブラヤシを栽培し「パーム油」という天然植物油を生産するためです。

パーム油は日本人の生活にも深い関わりがあります。実は私たちが年間に消費するパーム油の量は1人あたり4kg。しかし私たちはパーム油についてほとんど知りません。

なぜかというと、揚げ油や食品の原料として使われることが多いパーム油は、ほかの大豆油や菜種油と違い日常生活でほとんど見かけないためです。

しかしチョコレート、アイス、マーガリン、ポテトチップスやカップ麺、ファストフード、冷凍食品などの食品に含まれ、食品表示に「植物油脂」とあったらそれはほとんどがパーム油と思って間違いありません。

その他にも洗剤や化粧品といった日用品に含まれます。

私たちの生活も、熱帯雨林を削って作ったパーム油に支えられているのです。

アブラヤシの果実。搾油工場に運ばれてパーム油を絞る
提供: ボルネオ保全トラスト・ジャパン

パーム油生産はマレーシアの基幹産業。

アブラヤシは熱帯地方でしか育たず、農園を拡大するために膨大な面積の熱帯雨林が伐採され続けています

このままのペースで熱帯雨林の減少が続けば、2020年にはボルネオ島の熱帯雨林は60%も失われるという予測も出ています。


母親ゾウを毒殺され、孤児になった小ゾウが保護されている

母親を揺り起こそうとする子ゾウ
提供: Sabah Wildlife Department

群れで移動しながら生活するボルネオゾウは、伐採された熱帯雨林の跡地に広がる農園に迷い込んで若いアブラヤシの幹を大量に食べてしまいます。

農民も生活がかかっていますから、ゾウに大切な農園を荒らされないように銃を持ち出したり、毒のエサを撒いたりすることがあります。

そしてその結果、悲劇が生まれます。

小ゾウは母親を起こそうとしますが、母親は二度と起き上がりません・・・

保護されたゾウの飼育環境も良いとは言えません。

州政府に潤沢な予算がないため、保護ゾウは増えても飼育代は常に前借り状態。いつ資金が底をつくか不安です。

例えば野生のゾウ1頭を保護するために、1回約60万円かかります。

保護された小ゾウはまだ草を食べず、1日30リットルのミルクを飲みますが、現地にゾウ用のミルクはなく値段の高い人間用の粉ミルクを与えるしか方法はありません。

動物と人間の共生を目指して

提供: ボルネオ保全トラスト・ジャパン

私たちは追い詰められたボルネオゾウを州政府とともに保護・管理する活動を続けています。なぜならそれが先進国に住む人間の責任、パーム油のおかげで便利な生活を送ることのできる日本人としての義務だと信じているからです。

動物と人間がともに生きていくことのできる未来をつくっていくために、次の世代に残していくために私たちはあなたのサポートを必要としています。ぜひご協力をお願いいたします。

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